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紳士的な動物もいれば……

ミドリババヤスデの交尾
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オオオサムシの求愛行動
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ものごとには順序というものがある.例えば異性とお付き合いして結婚するには,自分をアピールして告白し,付き合ってうまくいけばプロポーズして結婚ということになる.この順序を無視して,見知らぬ人にいきなりプロポーズしようものなら「はぁ?頭おかしいんじゃないですか」と言われるのが落ちである.

動物の場合でも,昨年行われたデジタル映像コンテストの応募作品を見ればわかる通り,雄が雌にさまざまな方法で求愛して,雌が受け入れてくれればつがいの形成あるいは交尾ということになる.ヤマドリだって,ハクセンシオマネキだって,モズだって,雄たちは皆涙ぐましい努力をして雌の気をひこうとしている.

ところが,その手順を全く無視した輩もいる.

まず,「ミドリババヤスデの交尾」(データ番号: momo011109pt01b) を見てみよう.特に求愛行動らしいものが見られないまま,いきなり雄が雌の背中をよじ登り,交尾の体勢に入ってしまう.「え?これだけ?」という感じである.

「オオオサムシの求愛行動」(データ番号: momo030502cd01b) では残念ながら雄雌が出会う場面が映っていないが,オサムシの交尾についても同様である.私の所属する研究室に,オサムシの交尾器について研究している人がいる.交配実験のために容器に雄と雌を放り込むと,あっという間に(というのは大げさかも知れないが)雄が雌に乗っかり,後ろから交尾器を挿入する.この交配実験をするときには,プラスチックの容器をずらりと並べるのだが,なかなか壮観である(この様からこの研究者は「オサムシの○○ホテルの経営者」などと呼ばれる).

求愛行動の目的には,同種の異性であることの認知や,最も好ましい相手を選ぶ「配偶者選択」がある.一見求愛行動の見られないこれらの種では一体どうなっているのだろうか?オサムシの場合には,間違って雄が雄にマウントしてしまって,交尾器を挿入しようとしてハッと気づくことがあるという.つまりマウントする段階では異性であることの認知ができていないのだ(あるいは余程の慌て者か).同種であることの認知については,雄と雌の交尾器形態が一致するかどうかと言う「錠と鍵の関係」が関与していると考えられる.オサムシの交尾器は種によって特殊化しており,違う種類同士で交尾しようとしても,交尾器が壊れてしまったり,うまく受精させることができなかったりするのだ.その他,体サイズや性フェロモンも関係している可能性があるが,これについては現在研究が進んでいるところである.

ヤスデの場合は,雌雄が抱き合うような体勢になった後に,精包を持っていない空の交尾器を「仮入れ」するという行動が見られるという.この段階で種認識や配偶者選択が行われるのかも知れない.このように,目立った求愛行動が見られない種類でも,それに代わるさまざまな仕組みが発達しているようである.

ちなみに,私が研究しているカタツムリは,なかなか見ている前で交尾してくれない.一般的に生息密度が高くなく,移動速度も遅いため,雄と雌が出合う機会が少ないことが予想される.従って,容器に雌雄を一緒に入れようものなら滅多にないチャンスとばかりいきなり交尾してもよさそうに思うのだが,未だそのような場面を見たことがない.その代わり,数日後にその容器を見ると,交尾をした痕跡が残っていたりするのだ.ヤスデやオサムシと違ってシャイなのね.カタツムリの交尾前の行動はとても面白いのだが,これはまた別の機会に……
西 浩孝(京都大学大学院 理学研究科 動物学教室)
2005-03-25

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