今うちの博物館では特別展「世界一のセミ展」というのをやっている(9月2日まで)。世界一のセミ大集合、ということで、世界最大、世界最小、世界一原始的、世界一長寿、大阪は世界一セミの鳴き声がうるさい都市? という具合に、標本や市民参加による調査結果などを交えた世界一(?)の展示、なのである(くわしくは
こちら)。
で、最近は個人でもネットで情報をどんどん発信するようになってきて、特別展に来た人の感想が検索で拾えるようになってきた。で、やってみると・・・「社寺林の奥から蝉時雨が聞こえてくるというセットが作ってあって、神社のような門は本物、木まで植えてあるという作り込み」というような書き込みで、ふんふん、社寺林などの照葉樹林にすむヒメハルゼミの合唱鳴きを体感できる「ヒメハルシアター」(
写真)をご覧になって感心していらっしゃるのですね、ありがとうございます、と思って続きを読んだら、「これには巨額の予算がかかっているに違いない。大阪市はカネがないはずなのに、こんな無駄遣いして。けしからん!!」と、なんとそれは市政批判であった。くわばらくわばら。
という情報が館内に知れ渡ったのだけど、学芸員は苦笑するほかなかった。というのは、このシアターを作るのにお金はほとんどかかっていないから、なんである。門は奈良県内の某所で捨てるというのをもらってきて、それは実家が家具店の学芸員のトラックで運ばれて、セットは大工仕事が得意な学芸員がほぼ一人で設計・施行して、使われた部材はすべて廃材で、シラカシの木はこれも某所でもらってきたのを切って立てただけ、敷き詰めた落ち葉は植物園から、音を出すDVDはフリーソフトのiMovieで、という具合(くわしくは
こちら)。いやー、それだけ立派に見えたってことですな(でも予算はほしい)。
それはさておいて、セミ展では他にも世界中のセミの鳴き声が聞ける展示装置を作ってある(これもDVDプレーヤーを改造した手作り)。お金をかけずにこういう展示を自前で作れるようになったのは、素材がデジタルで簡単に扱えるようになった、ということが大きい。ウエブのおかげで、素材自体を手に入れる手間もだいぶ省かれた。例えば、生態学の教科書に必ず出てくるジュウシチネンゼミの鳴き声はコネチカット大学のCicada Centralという
サイトで聞けるし、世界最大のテイオウゼミ(
Pomponia imperatoria)の鳴き声も
ここにある(いずれもサイト管理者のご好意により、無償で展示で使わせてもらっています)。このような状況は、低予算で展示をつくる上でとてもありがたいわけです(でも予算はほしい)。
さて、ウエブの力で教育活動のバックアップしようというわれらが動物行動の映像データベースも、いくつかセミの鳴き声を聞くことができる。今回の特別展では、現在ミンミンゼミが幅を利かせている東京も、30年後には温暖化と都市化の影響でクマゼミ天国になるのでは、という予想をしている。30年後にセミ展をやるとしたら、なつかしの映像ということで
「鳴きながら移動するミンミンゼミ(♂)」(データ番号: momo060912un02b)を使うことになるのかも。
石田 惣(大阪市立自然史博物館)
2007-08-17