筆者は高校在学中、古典を学ぶ意義がわからず(これは、本人が古典の文法も語彙もまともに勉強しようとしなかったので、チンプンカンプンであったと同値)、源氏物語をこの時代に何で理系の男子が読む必要があるねん!と思っていた。今では、自分の今日的な感性・情緒が源氏物語の世界とつながっているようだとおぼろげながら、感じることができる。ダーウィンの業績は生物学の古典であり、分子生物学が繁栄する現代では学問的な価値など無いと考える人々も多いだろうなと思う。紫式部の業績をよく知らなかった私が、源氏物語の価値を理解できなかったように。
擬態は世間的によく知られた現象で、高校生物の教科書にも記載されている。MOMOでのおすすめ画像は、
「空中で静止するオナガグモ」(データ番号: momo050707ac01b)である。どうしてこんな現象が起こるのか、野生生物は鏡ももたないのに?ダーウィンの説明は、東京書籍から出版されているリチャード・リーキー編 吉岡晶子訳の「新版図説 種の起源」で読まれるとよい。ダーウィンは自然選択を、ある生物に生じた変異がその生物のおかれている生育条件のもとでその生物にとって有利であれば、その変異は残るという意味でしかないと言っている。しかしながら、これに気付いたことが凄かったのだ。
世界を巡回しているダーウィン展が、いま日本に来ている(http://darwin2008.jp/)。ダーウィンは同時代のメンデルの存在を知らなかった。1900年に再発見されたメンデルの法則のおかげで、自然選択は集団中の遺伝子頻度の変化として捉えることが可能になった、つまりダーウィンの死後に遺伝学の発展が進化論を支えた。突然変異が変異の供給源となり、自然選択の過程で個体に不利な突然変異は排除され、有利な突然変異は集団中に広がる。有利でも不利でもない、中立な突然変異に自然選択は作用しない。
中立な変異は集団の大きさに応じた確率で遺伝的浮動で固定され、排除される。特定の遺伝子の塩基配列、特定のタンパク質のアミノ酸配列は共通祖先から分化してからの年代が大きいほど変化に富む。これは分子生物学の発展で入手可能になったデータである。データを定量的に解析すると分子系統樹が得られる。テクニックは現代的な分子生物学・数学に依存するけれど、分子系統樹を構築しようとする試みは、ダーウィン以来の進化論の発展・受容を抜きに語れない。
広瀬祐司(大阪府立茨木高等学校)
2008-05-30