私はおよそスポーツ観戦とは縁のない人間であるが、それでも人生で何度かはプロ野球の試合を生で見た事がある。その最初の機会は甲子園で、まだ小学生の頃だったか阪神−巨人戦だった。目の前で新浦がピッチング練習をしていたのを見た記憶があるが、でも一塁側に座っていたような記憶もあるので、つまりはどちらかの記憶が間違っているということである。。。はっ。ひょっとしてどちらの記憶も間違っていて、実は私は阪神−巨人戦なんて見た事なかったのだったらどうしよう。。
それはともかく長じてからも数度球場に足を運んだ事があって、こちらの記憶は確かである。場所はグリーンスタジアム神戸。オリックスと、相手は、、あれ?やっぱり記憶があやふやだけど、行った事は間違いない。そのうち一度は球場に着いてみたらアロハ応援デーということで、アロハを着ていたら入場無料という日だったのである。でもそんなこと知らなかったので当然私はアロハなど着ていない。そんな常日頃からアロハで暮らす人じゃないのよ私は。ところが、「あちらでアロハの無料貸し出しも行っております」と言うじゃないか。ということで、ありがたくタダで入れる事になったのである。そんなまどろっこしいことしなきゃいいのにと思ったのは内緒だ。
で、喜んで見ていたのだけど、その頃はスポーツ観戦の際にはウェービングが大流行。で、なんか見ていると一塁側の方から波がひたひたと迫ってくるじゃないか。しかし、そんなスポーツ観戦とは無縁に生きてきた私の事、うわーいつ立ち上がればいいんだろうとドキドキしているうちにタイミングを逃してしまい一人だけ遅れて立ち上がってしまうというお約束を演じたのである。えー、考えてみると、私がスポーツ観戦に縁のない人間になったのは、運動が苦手である事と関係があるのであって、そもそも運動神経の良い人と言うのは、これまでやったことのない運動であっても「こう体を動かせ」と思ったら正確にその動きをトレースする事のできる人であるような気がする。だから、そんな私が、はじめての経験であるウェービングを失敗するのは、首尾一貫した事なのである。だからどうしたと言われると困るが。
で、
「ニホンミツバチの威嚇行動と集団内伝播」(データ番号: momo031027ac01b)である。ニホンミツバチにとってスズメバチは重要な天敵であって、その接近に対して全員で体を震わせて大きな音を立てる事で相手を脅かして追い払う。この映像はそんなシーンなのだが、良く見ると、ミツバチたちの体の震えは集団で完全に同調しているのではなくて、スズメバチの近くの個体から始まって遠くの個体に伝搬していく。まるでウェービングである。というか、ある個体が体を震わせる時のきっかけが隣の個体が体を震わせる事なので、まさにこれはウェービングと同じ事をしていると言える。その機能は違うけどね。
この映像では、スズメバチが威嚇を受けて少し離れた後でもまだ集団威嚇は起っている。これはそのメカニズムゆえに、脅威が遠のいた時でも誰か興奮した個体が体を震わせようものなら、その動きが一気に増幅されるからだろう。一方、野球場でのウェービングは時々一周したあとでも、まだ終わらず二周目に入っていく事がある。これも「隣の人が立つから私も立たなきゃ」と思うために止められなくなっちゃうからで、そういう意味で言うとこの映像と良く似た現象なのかもしれない。
で、私であるが、実はその後野球場に足を運んだ事がない。最近でもウェービングが行われるものなのかどうか知らないのだが、この映像を見たからには、今度は上手くできるような気がしている。とにかく「隣が立ったら私も立つ」だ。それだけ頭に入れて球場に行こう。あ、もう一つ、「もう片方の人が立ったら座る」ってのも頭に入れておかないと、私一人だけ立ちぼうけで残されてしまうな。
中田兼介(東京経済大学)
2005-12-09