飛行機に乗るのが嫌いというひとがいるのだが,私は単純だからか,足が床についているとなんとなく安心するので,べつに飛行機は嫌いではない。それに,飛行機嫌いのひとは「あんな鉄の塊が飛ぶなんて信じられない」というが,飛行機は鉄の塊ではない。ジュラルミンなのだ。ジュラルミンというのはジュラ紀の地層からおもに採掘されるアルミン化合物ではない。アルミニウムに銅やマグネシウム,マンガンなどを加えた合金なのだが,このマンガンなどの「など」が曲者で,このなかにわずかに飛行石が含まれていれば空を飛んでも不思議ではない。だから私は飛行機が空を飛ぶことにほとんど疑いをもたずに利用している。
長距離の国際線の便を利用すると,大概の場合寝る時間がとられる。目的地の時間に合わせるため,時差の関係で眠くもないのに機内の照明が落とされる。まあそれでも真っ暗になるわけではないが,明るいよりは暗いほうが寝やすいということだ。まぶたを閉じるだけではヒトは睡眠に必要な暗さを確保しにくいということなのだろうか。
そういえば子どもの頃,魚は目を開けて寝るときいて不思議におもったものだ。まぶたがないのだからそうならざるを得ないのだが,なんだか想像がつかなくて不思議だなあとおもった。どうせ夜になると真っ暗になるから眼を閉じてるのと同じなのだといわれ,わかったようなやっぱりよくわからんような気がしたものだ。だが,改めて考えてみると,まぶたがない動物は他にもいるわけで,例えば虫にもまぶたがない。となるとトンボやチョウチョも目を開けて寝るのだな。
眼を閉じるのではないけれども,アイマスクを使っているのではないかというガがいる。
「ブドウコハムグリガの眼帽の役目は?」(データ番号: momo050123pn01b)によれば,ある種のガの触角の根元には,円盤状にふくらんだ「眼帽」という構造があり,これは触角を寝かせると複眼を完全に覆うようになっているらしい。で,この夜行性のガは安眠のためにこの構造をもつのだろうかということを書いている。しかも,この眼帽の遮光効果を高めるように,このガの眼の周囲には長鱗毛が密生して眼帽と密着するようになっているとのこと。うーむ。よくできている。
こういう構造が進化するというのはちょと面白い。もしも安眠のための機能をもつものとして進化したのだとしたら,ふつうの触角をもつガの中に,少しだけ根元がふくらんだ触角をもつものがうまれ,それが昼間寝るときに,他個体が「明るくて寝られへん」「ねられへんとぬらりひょんって似てる」とかいっている横で「そんなに明るいかなあ」「あ,ちょと似てる」とかいいながら安眠を貪って,元気いっぱいで夜中に活動することで子孫を多く残したということになるのだが,やはり寝る子は育つということか。違うか。
とはいえ,夜行性の昆虫すべてがこういう構造をもつわけではないから,眼を隠せないやつらは昼間どうしているのだろうか。真っ暗なところを探して寝てるのか。あまり考えたことなかったな。だいたい虫って寝てるのと起きてるのと区別できるのかしらん。神経系の活動パターンからなんか区別できそうだけど。しかし,たとえばクマゼミのあのいきなり始まる大合唱は,目が覚めてからどのくらいで始まるのだろうか。なんとなく目が覚めていきなり全力で鳴いてそうな感じだが,朝からあれだけ全力で鳴いてたらどっかに無理があって早死にしそうだ。実際そうだけど。クマゼミの映像は
「クマゼミの排尿」(データ番号: momo050810cf01b)がある。
ちなみにアイマスクというのは英語ではsleep maskという。だから機内でアイマスクを2つ欲しくなったときに"Two sleep masks, please"といわずに"Eye mask two, please"とかいってしまうと"I mask to please"ということになる。つまり「私はお面をつけるから楽しんでね」というようなことになる。私ならそんなこといわれたら喜んで楽しんでしまうだろうなきっと。
森貴久(帝京科学大学)
2006-09-01