見栄えのする映像や眼を惹き付ける映像,そういった「魅力的な」映像とは,一般的に言えば,クローズアップの映像,動きの大きな映像,背景と対象とのコントラストの高い(抜けの良い)映像等であろう。また,編集して,激しくカットを切り替えるのも効果的である。「見せる映像」としては,そのような工夫や配慮が大切であり,不可欠でさえある。
ところが,研究のために行われる野外撮影では,まず第一に行動を記録するという目的があるため,そのような工夫や配慮を行わない/行えないことが多い。だから,動物は画面の中,しかも中央ではなくて隅っこに,小さく写っていることが多いし,動きも微妙であったりする。編集もせずに,とったままで登録されていたりする。
確かにこれらは「見せる映像」としては欠点である。でも,記録という観点からは必要なことでもあるのだ。
クローズアップをしないことは,背景の情報を記録しておくという観点から重要であるし,編集をしないで,いわゆる長まわしのままであるのは,行動の前後関係の完全な記録という意味で重要である。
MOMOに登録されている映像は,研究の過程で撮影された映像が多い。だから「見せる映像」としては,やや魅力に欠けるかもしれない。
でも,それらは記録として貴重で,未整理の情報を大量に含む,いわば原石なのである。その渋い魅力を味わうのもまた楽しいのではないか。それらの映像の魅力を「発見」することは,見る側にゆだねられているのである。そうやって隠された魅力を発見したら,登録されている映像を素材として新たな作品に仕上げるということだって考えられる。
さて,そういうわけで映像の紹介だが,こういう話であれば,どれを紹介してもいいのだが,とりあえず二つ程。一つ(というか二つ)は,
「ゼニガタアザラシの雄間闘争 1」(データ番号: momo050113pv02b),
「ゼニガタアザラシの雄間闘争2」(データ番号: momo050113pv01b)。これは,一連の行動記録を(長いので)二つに分割して登録したものである。映像の中に「初めて見た」という調査者の声が録音されているが,その通り,貴重な記録である。
「ブラウンキツネザルによるマダガスカルサンコウチョウの雛の補食」(データ番号: momo061130ef01b) は定点カメラによる記録映像である。定点撮影なので,この映像の主役であるキツネザルは,画面の端にその姿を一部現すのみである。その微妙さは「ああ,ちゃんと見たい」と思わせる欠点でもあるが,逆に魅力とも言える(言えない?)。
藪田慎司(帝京科学大学アニマルサイエンス学科)
2006-12-22