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動物にかかわる都市伝説

カメノテの採餌行動
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エボシガイの摂食行動
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エボシガイの摂食行動(その2)
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 皆さんは「友達の友達から聞いたんだけど、、、」と、こんな話を耳にしたことはありませんか?

 「ある男性が海水浴に出かけたときのこと。友達と岩場で遊んでいたら、その男性は足を滑らせてしまい、転んだ拍子にフジツボで足を切ってしまいました。
 それから数ヶ月後。その男性は膝に激しい痛みを感じたので、病院でレントゲンを撮ってもらったところ、膝の皿の裏側にフジツボがびっしりついていることがわかったそうです。
 なんでも人間の血液の塩分濃度は海水と非常に似ているので、フジツボが生育するのに適した環境なのだそうです。」
 この話にはいろんな変形バージョンが存在するようですが、「フジツボでケガ」「膝の皿にフジツボがビッシリ」というキーワードが共通しています。

 最後の一文が科学的根拠のように思えて、信じてしまう人もいるでしょう。
 実を言うと、私も大学に入学して間もない頃、全く同じ話をクラスの友達から聞かされて、「今度から海で遊ぶ時は気をつけようっと、、、」なんて真剣にビビったことがあるのです。
 しばらく気になっていたので、動物学講座の先生にこのことを質問してみたら、大笑いされました。

 結論から言いましょう。これは全くの作り話です。

 血液中に異物が侵入してきたら、直ちにこれを攻撃・排除する免疫システムが働くことを考えると、作り話であることは容易に察しがつくのですが、ここではフジツボの生態から真偽を確かめてみましょう。

 フジツボはよく貝の仲間と勘違いされるのですが、エビやカニが属する甲殻類の仲間で、蔓状の脚を持つことから萬脚類と呼ばれています。フジツボと同じ萬脚類のカメノテ「カメノテの採餌行動」(データ番号: momo040605cm01b)とエボシガイ「エボシガイの摂食行動」(データ番号: momo030428la01b)「エボシガイの摂食行動(その2)」(データ番号: momo030428la02b)の映像で確認してみましょう。潮が引いている時は乾燥から身を守るため、殻がぴっちりと閉じられているのですが、水をかぶると蔓状の脚を出したり引っ込めたりし始めます。
フジツボの子供はノープリウスという幼生の形で親から放出されるのですが、海水がかぶるようにならないと殻(開口部の蓋板)を開けないので、潮が引いたときに幼生を放出することはありません。ですから、干上がった岩場のフジツボでケガをしても、傷口と幼生の接触する機会はあまりないと思われます。

 またノープリウス幼生の大きさを考えると血管内(毛細血管の直径は約10μm)に入り込むのは難しそうです。体長は0.2 - 0.4mmぐらいなので、肉眼で存在が確認できる大きさです。地学でいうと砂(直径0.0625-2mm)の範囲に入ります。細菌が1〜5μm(μm=1mmの1000分の1)、ウイルスが20〜970nm(1nm=1mmの100万分の1)であることを考えるとべらぼうに大きいです。
 道で転んでケガをするたびに砂粒が全身の血管の中をぐるぐる巡っていたら、ちょっと怖いですよね。

 では塩分濃度の点はどうでしょうか。海水は3.3 - 3.5%、人間の血液は0.9%。血液の塩分濃度はさしずめ汽水域といったところです。汽水域でフジツボ類が生息している場所もありますから、塩分濃度だけに着目すれば生息できない範囲ではないかもしれませんが、それをもってして「生息環境として適している」と判断するのは早計です。
 もし、血管内と海の環境が似ているのなら、海によく行く人の血液にはノープリウス幼生だけでなく、貝の子供(ベリジャー幼生)やら動物プランクトンやらがウジャウジャいることになりそうです。

 ここまでの説明でまだ納得がいかない場合は、ノープリウス幼生を血液で飼育してみるというのはいかがでしょう。

 皆さん、まことしやかに語られる都市伝説には気をつけましょうね。
佐藤ミチコ(大阪自然史博外来研究員)
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