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落ちた枝を食べるシカ I
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すばやく移動するユキミノガイ
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 先月のことだけれど、新聞でこんな記事を読んだ。
 牛やシカが食事や休憩の際、多くの個体が南北方向に向いている、とドイツとチェコの研究チームが米科学アカデミー紀要電子版に発表した。ネット上で無料公開されている衛星写真Google Earthで写っていた牧草地の牛の向きを調べたら、食事や休憩をしている個体はおおむね地磁気の南北を向いていた。チェコ国内の野生のシカも同様の調査結果が出た。地磁気を感じる能力は渡り鳥やサケで知られているが哺乳類ではネズミの仲間やコウモリなどで報告があるだけ。チームは「今まで牛飼いや狩人が気がつかなかったのは驚きだ」とコメント。

 ハァ、こんな研究の仕方(Google Earthを使う方法)もあるのか、、、と驚いたと同時に、著者がコメントしているように、これまでそういった報告や研究例がなかったことにも驚いた。
同種の個体がたくさんいて、それがみんな同じ方向を向いていると、なんだか人の目を引くもの。人間だって同じこと。大勢の人たちが同じ方向を向いてじっとしているところがあったら、なんだろう?と気がつくもの。

 私は卒論の時にホタテガイの研究をしていたのだが、実験に使う貝を大きなお風呂のような水槽で飼っていた。ある時奇妙なことに気がついた。みんな同じ方向を向いているのである。これは単なる偶然かと思って、棒でかき混ぜてバラバラの向きにしてやると、最初は堅く口を閉じてジッとしているのだが、しばらくするとじわじわと殻を開け始め、パフパフと殻を小さく開け閉めしてはくるくると同じところで回転している。そして、さらにしばらくするとパフパフを止めてしまう。するといつの間にかみんなそろって同じ方向を向いているのである。なんだか意思を持って特定の方向を向こうとしているように見える。
 ここでは水槽の片方からパイプで海水を流しこみ、反対側から流れ出て行く仕組みになっている。エアレーションのブクブクが届く範囲にいる個体だけ、ちょっと方向がずれているところを見ると、水流と関係がありそうだ。ホタテガイは海水中の懸濁物質を濃しとって餌にしているので、摂餌効率を最大にする方向(殻さえ開けておけば、勝手に餌が入ってくるような状態)があるんじゃないかなぁ〜、と思って調べてみたら、やはりそういったことは知られていて、ホタテガイの仲間では鰓や口唇が位置している前縁〜腹縁を上流側に向けるそうだ。まぁ、研究を始めたばっかりの学生が容易に気がつくことなんて、たいがい誰かが既に研究しているものだ。

 こういった経験があったので、前述の研究チームのコメントにはちょっと居心地の悪さを感じていた。気づかなかったんじゃなくて、公の場で発表する機会がなかっただけじゃないの?と。
 後日、ネットで同じ記事を読んでみたら、「ウシやシカが体を同じ方角に向けることは以前から知られていたが、風や太陽の向きの影響だと考えられていた。」という、(ちゃんと新聞記事と見比べたわけではないので不確かなのだが)新聞記事にはなかった一文が付け加えられていた。体を同じ方向に向ける事実は知られていた、ということがわかり、もやもやが晴れたような気分になった次第である。


Google Earthみたいに誰か登録された映像で研究してくれないかしら?ー「落ちた枝を食べるシカ I」(データ番号: momo070324cn01b)
ホタテガイと同じミノガイ目の貝の動き。動き方は似ているー「すばやく移動するユキミノガイ」(データ番号: momo040110lb01b)
佐藤路子(大阪市立自然史博外来研究員)
2008-09-12

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