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真っ黒仮面はなぜ怖いのか

カワウの集団採餌
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ゴンズイの群認識
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秋になってほっとしていることがある。それは日差しが弱まり、街行く自転車に乗る人のUV防止サンバイザー率が低くなったことである。

ここでまず、UV防止サンバイザーとはどんなものか説明しておこう。色は全体的に黒っぽく、普通のサンバイザーに比べ、つばの部分がとても広い。つばは可動式になっており、下ろすと顔全面がすっぽり覆える。使用している様子はまさに溶接用ヘルメットのようであると書くと、きっと「あぁアレね」と思い浮かべてもらえることだろう。

話を元に戻そう。ここ大阪は自転車がとても多い(なんでも1.3人に1台の割合*で、全国1位らしい)のだが、夏になって人目を引くのが、紫外線対策をした自転車の女性。4台に1台ぐらい(筆者の単なる印象)は大阪名物「さすべえ(傘を自転車に固定する器具)」に日傘をつけている。しかし、ここ2年ぐらいで急激に勢力を伸ばしつつあるのがUV防止サンバイザーである。

さすべえは便利だけれど、傘の露先部分が歩行者の目の高さにきているにもかかわらず、サッと傘の角度を変えてよけることができないので、人が多いところや狭いところでは危ない。私もかつて愛用していたが、かような理由で大阪に引っ越してきてからほどなく使うのをやめてしまった。なので、UV防止サンバイザーに乗り換える人が出て来て、「いいことだ」とはじめは好ましく見ていた。

しかし、である。このサンバイザーをつけて自転車に乗っている人に出会うと、怖いのだ。初めて見た時、顔面真っ黒のインパクトでギョッとしたので、きっとこの怖さは見た目のせいだと長い間思い込んでいた。
それに気がついたのは、確かT字路の近くで、サンバイザーの人とすれ違った時だった。私は直進したいのだけれど、相手が曲がれば衝突してしまう間合い。さて、相手はどう出るか。直進、右折、どっちだろう。その人はぎりぎりで急に右折し、私は判断に困ってふらつくハメになってしまった。このサンバイザーをつけていると、相手がこの先どっちへ向かうのか大変わかりづらい。これが怖さの原因だった。

方向転換する時、だいたい人はまず目線をこれから向かう方向に移動させる。これと同時に顔も動くことが多い。少し遅れて胴体の軸が行きたい方向に曲がっていく。おそらくお互いが近づいていく過程で、片方あるいは両方が相手の目線と顔の一瞬の動きを見て、動きを予測し、衝突を回避しているのだろう。
普通はこんなこと考えながら行動していない。だけど皆、意識しないでもやってのける。考えようによってはすごいことだ。


この衝突回避の方法、ヒト以外の動物ではどうだろう。
鳥は群れで飛んでいるときでも、個体同士ぶつかったりしない「カワウの集団採餌」(データ番号: momo070627pc01b)
鳥は人間と同じ視覚依存の生き物なので、視覚から得られる情報を手がかりに相手の方向を予測し、それに重ならないよう、飛翔速度と向きをコントロールしているのだろう(もし間違っていたらご指摘お願いします)。

群れを作る生物の代表格、魚はどうだろう。海鳥や大型の魚に追われて逃げ惑う魚の群れの中で、個体同士がぶつかることなく鱗をキラキラさせながら身を翻している映像をどこかで見かけたことはないだろうか。
タラやイワシなどの目を覆うと、覆いがない時より群れの個体間の距離が大きくなり、側線(頭部直後から尾鰭基部をつなぐ1列の鱗に開口する魚類特有の感覚受容器)を遮断すると個体間の距離は小さくなるという室内実験の結果があるそうだ。このことから視覚と側線の感覚が協調して適当な個体間の距離が保たれている#と考えられる。ただし、それに加えて嗅覚を利用している魚もいる。ゴンズイは兄弟とそうでない個体を嗅覚で区別し#、異なる群れを混ぜても、しばらくするとわかれてしまうそうだ。「ゴンズイの群認識」(データ番号: momo030915pl01b)

鳥にしろ、魚にしろ、人間からするとかなりの速度で動くので、群れの中で個体同士がぶつからないのはとても高度なことのように思えるが、人間がやっているように、相手の目線やちょっとした頭の傾きまでが進路予測の手がかりになっているかは(あくまでも個人的な予想だけれど)怪しいような気がする。


UV防止サンバイザー、私も日焼けしたくないので心動かされるところは否めないのだが、安全面でのデメリットを考えると、二の足を踏んでしまう。透明、いや、せめてどこを向いているのかわかる程度のスモークにしてくれないかな。もし改善されたら、ヘビーユーザーになるかもしれない。(見た目をけなしておいて、結局買うんかい!)メーカーさん、ヨロシク!


*自転車産業振興協会『自転車統計要覧』平成16年都道府県別自転車保有台数
#週刊朝日百科「動物たちの地球」93
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2009-10-09

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