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カルガモを追いかけるバン
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ちょっと必要があってカワセミの映像を探していた。カワセミは翡翠と書く。翡翠というと,あの緑色の硬玉のことだとおもっていたが,語源的には硬玉の翡翠のほうがあとらしい。いずれにしろ,美しい煌めくような青緑色が特徴で,カワセミは飛ぶ宝石とも呼ばれている。

「カワセミ」で検索すると,現在のところ2件の登録がある。いずれも東京都町田市内の同じ場所(下水道局の調整池)で撮影されたものだが,今回紹介する映像はそのカワセミではなく,同じ場所でカワセミを撮影しようとしていたらたまたま映ったカルガモとバンの映像である(「カルガモを追いかけるバン」(データ番号: momo060903un01b))。主役はカルガモとバンなので,カワセミの検索ではひっかからない。

この短い映像は,カワセミを写そうとしてカメラを構えているところに,そのカワセミの後ろをカルガモとバンがすごい勢いで駆け抜けて行くところを捉えたものである。なんだか一瞬で終わってしまうのでよくわからないところもあるのだが,これを詳しくみているとなかなか面白いことがわかる。

まず興味深いのは,カルガモの駆け抜けは水面を跳ねていないのに対して,バンは水面を跳ねながら駆け抜けているところである。つまり,よくみると(あるいはコマ送りしてみると),カルガモの駆け抜けのときには水面に丸い波紋が残らないのに,バンの駆け抜けのときには丸い波紋が残っているのだ。登録者の説明文には「カルガモが猛スピードで泳ぎすぎ,そのあとからバンが水面を蹴って駆け抜けていきました」とあり,「泳ぎすぎる」と「水面を蹴って駆け抜ける」と区別されている。鋭い観察眼である。しかし,なんでこういう違いになるのだろうか。

その理由はよくわからないが,両者の足についていえば,バンとカルガモには大きな違いがある。それは水かきの有無で,バンはじつはツル目クイナ科の鳥で,水鳥っぽいのに足に水かきがないのだ(オオバンにはある)。つまり,この映像のバンの疾走は,水かきのない足で行なわれている。体を浮かせるために翼を広げて少しはばたいているようだ。それに対してカルガモには立派な水かきがあるのだが,それを使って水面を蹴ることはあまりしないらしい。映像でカルガモの体の水面からの高さをみると,あくまで足は水中で水を掻いているようにみえる。カルガモは助走なしでほぼ垂直に飛び立てるから,水面を蹴ることはもともとあまりしないのかもしれない。しかし,カルガモにとって水を掻くほうが水面を蹴るより速いというのは少し不思議だ。

この映像のもうひとつの興味深いところは,カワセミの反応である。棒杭のところに止まっていたら,後ろをなんかよくわからんものが猛スピードで通過したら,それはびっくりして逃げるだろうが,この映像をみると,カワセミはカルガモが来たから逃げたのではなく,バンが来たから逃げたようにみえる。なんというか,カルガモが凄い勢いで来たので,何だろうとちょとだけ注意をそちらに向けたらその瞬間にバンが水面を疾走してくる姿が見えて,うわわ,てな感じであわてて逃げたようなのだ。まあ,逃げてくるやつよりも追いかけてくるやつのほうがおっかないのは世の習いだろうが,疾走してくるカルガモとバンとを区別して,危険度に応じて異なる反応をしたということなのだろうか。だとすると,その危険度を区別したものは何だろう。水面を蹴るか蹴らないか?翼を広げるかどうか?くちばしが尖ってるかどうか?

そういえばバンは漢字では鷭と書く。鷭といえば,吉田牛ノ宮町にある飯屋である。もう10年以上行っていないが,まだあるかとおもって調べてみると,まだまだ健在のようだ。私がゴルゴ13を読むようになったのはここからである。そうか,鷭ってバンだったのか。いま気づいた。

この映像はカメラの視野をたまたま横切って撮影されたものだが,町田市内でカワセミがみられたりバンが水面を走ってたりと,じつは身近に興味深い行動はあるのだなとおもわせてくれる。同じ場所でみられたバン,カワセミ,カルガモの他の行動の映像も登録されているので,そちらもご覧ください。
森貴久(帝京科学大学)
2006-11-03

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