兄弟殺しといえばカツオドリである。カツオドリは「カツオドリの怖いもの知らず」といって,かなりの高さからいきなり水中に飛込んで餌をくうことが知られている。以前にこのコラムで
「カツオドリの飛び込み採餌」(データ番号: momo030607sl01b)を紹介したが,カツオドリの飛込みの映像は
「アオアシカツオドリの飛び込み採餌」(データ番号: momo061207sn01b)というのもあって,こちらのほうがより明瞭に飛込む様子が確認できる。なんだか海岸に近そうな浅い海に飛込んでいて,ふつうなら頭を打つのではないかと思われるのだが,そこはさすがに怖いもの知らずのカツオドリだから,何の躊躇もなく飛込んでいく。しかしほんとに海底にくちばしを突き刺してしまうなんてことないのかしら。もちろん日常的に利用している海岸沿いであれば,どこがどれくらい浅いか深いかということについて認知地図が出来上がっているかもしれないが,それでも,その認知地図の作成過程で,まちがってくちばしが刺さって抜けなくなって困ったことがあったかもしれないし,そういう経験なしに作成した地図があっても,海岸付近なら潮の干満で実際の深さはかわるだろうから,潮汐情報を常に更新していないといけないはずだが,そのへんはどうしてるのかしらん。
とはいえ島の周りというのは急に深くなるから,少なくともこのあたりはいつでも大丈夫とかいう程度で問題ないのかもしれない。映像をみると,さすがガラパゴスというか,けっこうでかい客船が数隻,接岸こそしないものの島のすぐ近くに停泊しているのがみえるから,たいして考えずに飛込んでもくちばしが刺さって抜けなくなることはないんだろうなたぶん。
このカツオドリは飛込んで1mくらいの深さまで潜るだけだが,ペンギンになると,100m以上は平気で潜る。まあ飛べないのだからそれくらいできなきゃいかんようにもおもうが,たいしたものである。ペンギンが潜る映像としては
「アデリーペンギンの同調潜水行動」(データ番号: momo030605pa01a)があって,これは多くの個体が一斉に潜水する様子を撮影している。この行動のおもしろいところは,多くの個体がほぼ同時に飛びこんでほぼ同時に水面にもどってくるからみんな同じ深さで仲良く潜っていたのかといえばさにあらず,その間に潜っていた深さはばらばらであることだ。つまり,同時に潜り始めながら15mのところで餌をくうやつもいれば30mまで潜るやつもいるということだ。異なる深さで餌をくうのは,これだけ多くの個体が同じ場所で餌をくうと競争になるから深さを違えるのだというのがありそうな説明だが,潜水をわざわざ同調させるのだから,その目的は水面付近での個体数密度を増加させることにあるんだろうな。映像をみればわかるが,このアデリーペンギンは,一面結氷したところに空いている水開き部分(ポリニアという)で採餌している。アデリーペンギンの捕食者は海棲哺乳類だから,こいつらもずっと水中にいるわけにはいかずにときどき空気を吸う必要がある。となると,やはり水開き部分近くにいないといけないという事情があって,それに対抗するひとつの方法として,集団で同調潜水をしているのだろうと解釈されるのだが,まあそれはたしかにありそうな話だ。
しかし,これだけの個体数となると,いつ浮上するか誰が決めてるんだろうか。深く潜ったやつと浅く潜ったやつのどちらに合わせるのだろうか。彼ら自身も誰に合わせるのか結構複雑な対応が必要になって,「潜るやつが多すぎる」と文句をいうのかもしれない。
森貴久(帝京科学大学)
2008-04-11