「人里の動物」をテーマにしたデジタル映像コンテストに応募された49点の映像を、4クラスの生徒に見せてクラス投票を実施しました。読者の皆さんの大多数は、高校を卒業されているでしょう?昔受けた授業の雰囲気をおぼえてらっしゃいますか。ふつうの授業では、いろんな筋道を認められることもあるにせよ、到達点は一個の正解であることが多いです。自分の感覚をたよりに作業ができるのは、芸術や家庭科の授業であることが多いです。
さて、高校生物の授業でクラス投票を実施しました。どの映像についても約40人が採点し、その算術平均点を得点としました。「自分の感覚で採点して下さい」と言われて、一瞬ですが生徒たちはキョトンとします。10代後半の男女が机を寄せ合って、コンテストにエントリーした映像に見入るわけです。そんな彼ら・彼女らの共感を得たのが
「ミシシッピーアカミミガメの求愛行動」(データ番号: momo041023ts01b) 4.7点でありました。メスの前に回り込んで手をプルプルする求愛行動は、強烈な印象を与えます。
「イシガメの産卵」(データ番号: momo040806mj01b)は大写しの映像が好評で、一度生んで埋めた卵を掘り返して踏みつぶしたというストーリーが不思議であったようで4.6点を獲得しました。亀の映像が1・2位を独占です。
「ハシブトガラスのヒナの成長」(データ番号: momo051005cm01b)では、ヒトの鳴き真似が上手いと感心しきりでした、身近な生きものでありながら、カラスの卵・雛を見たことがない生徒が多く、この映像は斬新に映り 4.5点を獲得です。この映像と同点3位になったのが
「アメリカザリガニに威嚇するイトヨ」(データ番号: momo050918ga01b)です。甲冑に身を固めたアメリカザリガニの接近を、よくイトヨが防いだことを賞賛する声が高かったです、子を守る父は強い!というコメントがかなりありました。どうして、このような自らの身を危険にさらす行動が進化したのか?これをきっかけに使って考察すると良いかもしれません。映像を見て生徒たちが残念がったのは
「キジバトの子育て」(データ番号: momo051010so01b)です。親鳥がいなくなった雛を探す姿、雛がいなくなったことを告げるテロップに、生徒たちは素直に悲しんでました。気分が落ち込んだ分、得点が伸びなかったようで、 4.4点の5位でした。
同点6位に
「福井市に飛来したコウノトリ」(データ番号: momo050714cb01b)と
「オニヤンマの回転体への反応」(データ番号: momo050905as01b)が入りました。どちらも 4.3点を獲得です。野生のコウノトリがまだいたのかと驚きながら、豊かな環境だからこそコウノトリが飛来するのだと、生物と環境の関係に思いを馳せる生徒もいました。一方では、羽ばたかないオニヤンマのメスに対して、オスが定位しないことを不思議に思う生徒たちが多かったです。トンボの視覚とヒトの視覚に違いに思いを馳せたコメントが多数ありました。
トゲヒシバッタの映像は組になっていて、その対照実験のデザインと、その結果から推測される捕食回避行動の意義がわかりやすく好評でした。
「トゲヒシバッタの擬死(control)」(データ番号: momo040902cj01b)は 4.1点を
「トゲヒシバッタの擬死(treatment)」(データ番号: momo040902cj02b)は4.0点を獲得です。教育用としてもこの2つの映像の価値は高いなと思います。動物行動の映像データベースは今や400本近いデジタル映像を擁しています。この中には、教育用として適した作品も多いのではないでしょうか。ピックアップしてみるとどうなるのか楽しみです。
さて、最後に
「カブト虫の飛行」(データ番号: momo051005un01b)は、宙に浮ぶカブトムシの姿勢が印象的であったようです。
「電動歯ブラシの実験」(データ番号: momo051005ae03b)については、アメンボが束になってかかってきたことに驚いてました、どちらも 4.0点を獲得です。電動歯ブラシの振動数を変えると、アメンボの反応がどう変わるか見てみたいというコメントもありました。ひとつの実験デザインを見ると、それをどう洗練・発展させればいいかと自然に発想が湧いてくるようです。
今回のデジタル映像コンテストの日程は高校3年の入試直前(推薦入試の真最中)であり、また定期テストの直前でもありますので、他の学校からはクラス投票の応募がありませんでした。年が明けて、センター試験が終わり、来年度への構想を練ることができる時期に、是非このコンテスト応募作品にクラス投票を試みて下さい。このコラムに掲載した映像だけにしぼってみたら、数もそんなに多くなく案外楽しくできるかも知れません。あれこれやっているうちに、あっという間もなく師走を迎えました。時節柄どうぞご自愛下さいませ、そして良いお年をお迎え下さい。
広瀬祐司(大阪府立茨木高校)
2005-12-02