子供の頃、盆と正月が楽しみだった。京都の市中では近所の子供を集めて、町内会の地蔵盆が開かれていた。お菓子やスイカを振る舞われ、福引きまであった。お坊さんがやってきて、長〜い数珠を回すときはちょっとくらい我慢せなあかんと思って乗り切った。今は亡き祖父が、福引きの景品を「家庭用!」と一言、喜んで持って帰ったことを覚えている。
お盆で困ったことは、13日から16日まで虫取りを禁止されたことであった。その時期の虫は「おしょらいさん」であって、取ってはならぬと厳命されていた。お盆の間は、あの世から死んだ人たちが帰ってくるのだ、とわかった。あれは「おしょらいトンボ」や、と言われたことがある。昔は親戚中のいろんな大人が、いれわかり立ち替わり子供であった私の相手をしてくれていた。誰がどの場で言ったのか、特定の種を指してそう言ったのか、お盆の時期のトンボを指してそう言ったのかはもうわからない。
さて、幼心に残った「おしょらいさん」を、書こうとした。空を舞うトンボを見上げながら、お盆が過ぎることを待っていた。禁を犯して網で捕まえたトンボを、これが「おしょらいさん」かと再び空に放った・・・もう記憶は断片でしかない。多分この世に生きて来るのだから「お生来さん」だろうとgoogle検索するとこちらは少数派のようだ。京都では「お生来さん」でも通じるのかもしれないが、「お精霊さん」とする方が多いみたいだ。
京都の市中で見上げたトンボがどれだかは、今は知るよしもない。引っ越し先の寝屋川市では、見たこともないトンボが待っていた、
「クロイトトンボの連結産卵」(データ番号: momo080811un01b)、
「チョウトンボの打水産卵」(データ番号: momo060809un01b)。どちらも繊細で、網の扱いを間違うとすぐ体がいたんでしまう。ああ、こういうトンボは捕ってはいけないなと幼心に思った。
広瀬祐司(大阪府立茨木高等学校)
2008-08-15