コラム連載開始!
おかげさまで,このデータベースの登録映像は150を越え,さらに増え続けています。ますます,魅力的になるこのデータベースを,さらに楽しんでいただくため,これまでに登録された映像の中から毎週1本の映像を選び,皆さんにご紹介していくことにしました。
執筆者は,このデータベース運営メンバーや運営グループが依頼した方達です。映像を選ぶ視点は,執筆者によって違うでしょうが,それぞれに魅力的な映像を,あるいは,その映像の気がつきにくい見どころなどをご紹介して行きます。どうぞ,お楽しみください。
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オビテンスモドキは魚である。魚といえば水の中の生き物であるが,彼らは寝る時には砂の中で寝る。砂の中で寝るのに、彼等はなぜかサンゴ片を集めて砂の上にのせる。なぜこんな「余計」なことをするのだろうか。高柳さんはこれについて「普通の魚には動かせないような大きなサンゴをいくつもかぶせることで、砂に潜って寝る他のベラ類から睡眠場所を守ることができているのでは」と書いている(関連論文が参考文献としてあげてある)。なるほど、である。
どうでもいいが、私は寝る時に布団が重くないと安心して眠れないくちである。私の父親もそうだったらしく、泊めてもらった先のふとんがあんまり軽かったので机をかぶせて寝たと言っていた。オビテンスモドキも砂が重くないと寝た気がしないのだろうか。
閑話休題。他のベラ類が潜りにくいようにサンゴ片を置くのだとすると、当の本人はどうやって寝床に入るのだろう。映像をみると、オビテンスモドキは、サンゴ片を一つ口でくわえて動かし、その空いたスペースから、スルッと一瞬で潜り込んでいる。見事なものである。まるで砂に吸い込まれるようだ。
コマ送りで見ると、尾ヒレを一回往復させる間に全身が砂の中に消えている。こういうのを「巧み」というのだと思う。職人技や高度なアスリートは、しばしば複雑な運動を、いとも簡単そうにやってみせる。彼等のそういった体の動きを私達は賞賛するわけだが、ヒト以外の動物の行動にも、同じような感嘆の念を覚えることがある。今回の映像にもそれを感じる。
このような「巧みさ」は文章ではなかなか伝えられない。今回のオビテンスモドキの行動の、言葉で言えば「砂に潜った」でしまいである。しかし、彼らの行動にはそれだけでは語り尽くせないものがある。
行動自体の魅力、動物が動いているそれ自体から感じる感動。そういったものを伝えるには「見る」しかないのかもしれない(いや「触れる」ってのもあるかな)。
今回紹介した映像は高柳茂暢さんの
「オビテンスモドキの寝床づくり」(データ番号: momo031201nt01a)です。
藪田慎司(帝京科学大学アニマルサイエンス学科)
2004-10-22