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効果ありそでなさそな、、、

ヨツハモガニ幼生の孵化
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突然ですが、これをご覧のみなさん、いまから私の言うことを想像して実際にその動作をしてみて下さい。

1.ちょうど頭のてっぺん方向に見事な満月が出ています。これを眺めて下さい。

2.ちょうど目の高さぐらいに井戸のようなものがあります。中に何が入っているか覗いて下さい。

できましたね。で、その時のあなたの顔についての質問を2つしますので正直に答えて下さい。1番では口が開いていませんでしたか?2番では鼻の下が伸びていませんでしたか?

 このちょっとおマヌケな表情は私の長年の疑問なんです。というのも、口を開けたから、鼻の下を伸ばしたからといって、ものがよく見えるようになるわけではないからです。1番は単に下あごが引っ張られるような姿勢になって、口を開けると楽だから、2番は下瞼を少しでも下げるためかな、と頭をひねってみるのですが、肝心の効果があるかは疑問です。

 こんな風に人間の不可解な行動なんぞは数え出したらキリがないように感じるのですが、動物行動の勉強をしていると「それにひきかえ動物の行動はなんと洗練されているのだろう」と感心させられることがよくあります。でもそんな動物たちにも、意味がありそうでなさそうな行動を垣間見るときがあって、そんな時は拍子抜けするどころか、ものすごく愛おしさが込み上げてきたりします。

 そのような行動の一つが「ヨツハモガニ幼生の孵化」(データ番号: momo020423pq01b)で見られる母ガニのつま先立ちです。卵がたっぷりくっついている腹部(カニのふんどしと呼ばれている部分)をパタパタ開閉させて孵化を促し、殻を破って出て来た幼生を飛ばすのですが、その時脚の何本かは宙に浮かし、残りの脚もつま先立ちになっているのです。野外での孵化に運良く出会ったことがあるのですが、やっぱり母ガニはつま先立ちしていました。
 主観的なのですが、ちょっとでも遠くに飛ばすために脚の伸びの分だけでも稼ごうとしているように見えて、初めてこれに気がついたときは「健気にがんばっているのう、、、がんばれよ」と心の中でつぶやいたものです。上体を起こせば十分腹部(カニのふんどしと呼ばれている部分)を動かす空間は確保されるように見えますし、幼生を飛ばすには腹部をどれだけ勢い良く開閉するかにかかっているような印象を受けます。だから私の目には「わざわざ危なくて大変なつま先立ちなぞして、、、」と映ったのです。
 もしこの姿勢が「泳ぐ力が強くない幼生をなるべく遠くに分散させたい」という母ガニの思惑あっての行動だとすれば、どこまで効果があるものなのか、よく分かりません。悲しいかな、大きな海の波の力の前にはつま先立ちで稼いだ距離は気休めにもならないかもしれません。

カニもなんだか人間くさいところがあって頬が緩んでしまいます。

え?私?問いの結果、どうだったですって?いつもはそうならないように気をつけているのですが、ちょっとでも気を抜くと口が開いてしまったり、鼻が伸びている自分にハタと気がついたりします。慌てて顔を元に戻していたりします。そんな私を目撃しても、見なかった振りをしてそっとしておいて下さい。
佐藤ミチコ(京都大学瀬戸臨海実験所)
2004-11-26

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