「ヤマドリの求愛と産卵」(データ番号: momo040111un04b)
ヤマドリといっても鳥ではない。魚である。この映像は、第一回「動物行動のデジタル映像コンテスト」で大賞を受賞している。さすがに素晴らしい映像である。この映像で私が特に印象づけられるのは、オスが広げた背びれの、美しい山吹色である。
映像では、この山吹色は海底の砂を背景としていている。しかし、このオスが本当に見せたかった相手は、そばにいるメスである。あのメスの目から見たら、どう見えただろう。メスの視線で見れば、あの背びれの背景となるのは、おそらく海の藍色だろう。だとすれば、あの美しい山吹色はなおいっそう鮮やかに浮かび上がっていたかもしれない。
確かに、私たちの目には、青色を背景とする黄色は鮮やかに見える。だが、ヤマドリにとってもそうなのだろうか。
私達の視覚では、青と黄の2色に対して「反対色計算(color opponent processing)」というものを行うが、このために青を背景とした黄色(青と隣接した黄色)がよりはっきりと見えるようになっているらしい。実は、魚類でも同様の計算が行われていることが知られている。
ヤマドリそのものの色覚が調べられているかどうかは知らないが、彼等が同様の色覚メカニズムを持っていてもおかしくはない。だとすれば、あのオスの広げた背びれの山吹色は、暮れていく海の青さを背景に、それは美しく輝いて見えたかもしれない。
ところで、今回映像を見直して気がついたのだが、ヤマドリのオスは背びれを広げる時に、同時に尾びれも広げている。そして、それがなんと、鮮やかな青色に輝いているのである。彼等は、自分自身の体にも鮮やかな色の対比を纏わせていたのだ。
ヤマドリの背の山吹色を、海中の藍色を背景に見てみたいものである。映像の中のあのメスがあのオスに惹かれたのがなぜだったのか、その理由がもっとよく理解できそうな気がするのである。さぞ美しいオスだったのではないだろうか。
藪田慎司(帝京科学大学アニマルイエンス学科)
2005-05-27