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視力自慢

移動しない餌モデルに対するカマキリの捕獲行動
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自慢じゃないが私は目が良い。どのくらい良いかと言うと、両眼ともに視力2.0で、健康診断に行くたびに測定してくれる人にクスクス笑われるくらいだ。ちなみに普通の視力検査で測定できる視力は最大2.0だから、本当はもっと良い可能性だってあるわけで、もし水銀柱で視力が測れようものなら、きっと視力計がパリンと割れるに違いないなどと書くと大げさになるのでやめておく。で、最初に自慢じゃないと書いたが、ホントはちょっと自慢で、野外で生き物を見る事を生業としている私にとって目が良いことは、言うなれば料理人にとっての切れの良い包丁、女優にとっての美貌、お相撲さんにとっての力持ち、なのである。

そんなことはどうでもいいのだが、目が良いことは無条件で喜ばしいのかというと必ずしもそうでもない。例えば、道を歩いていて向こうからやってきた知人に私が気づいて会釈をしたとする。しかし、大概はまだ向こうはこちらが見えていないのである。いや、目に入っているのだが、こちらを認識できないのだな。ということで私の会釈は宙に浮く。かといって、相手がこちらを認識したことを確認してからにしようと思うと、今度はタイミングを逸して向こうに先を越されてしまい、なんだかバツが悪かったりする。

こういうことを繰り返していた子供の頃の私は、「目が良くない人には、世の中は一体どう見えているのだろう」と常日頃から不思議に思っていて、「最近目が悪くなって」という人がいると、Vサインをして「これ何本?」と聞いては「バカにしているのか!」と怒られたり、度の強いメガネをかけたらきっと目が悪い人の体験ができるに違いないと試してみては頭が痛くなったり、いろいろした。全くもって子供と言うのはアホなものだと言えよう。私だけか。

で、「移動しない餌モデルに対するカマキリの捕獲行動」(データ番号: momo011114ta01a)である。チョウセンカマキリは、コンピュータのディスプレイに映し出された正方形と、その両横にバタバタ上下に動く棒がくっついた図形を餌と認識して捕まえようとするらしい。これは、必ずしもカマキリが「目が悪い」といっているのではない。目の解像度自体は良いのだが、脳で視覚情報を処理する過程でディテールが落ちてしまうために、この図形を餌と認識しているのかもしれないからである。とはいえ「見る」というのは情報処理まで含めて成立することなのだから、「カマキリは餌を正方形+二本のバタバタの棒だと見ている」と言うのは悪くは無さそうである。そうか、こんな風に世界が見えているのか。

話を人の視力に戻すが、これもまだ私が子供の頃、「ブッシュマン」という映画が大流行して、巷では「ブッシュマンの視力は5.0!」とかまことしやかに語られていたものだ。で、子供だから「うわー、すげー、5.0ってどんな風に見えるんだろー」とか懲りもせずに思っていたわけだが、今になって考えてみると、そんなにいろんなものが見えてしまうと、必要な情報を抽出してくるのが煩わしくて大変かもしれない。というか、実は私も知らない間に街でニカウさんに挨拶されてたかも。
中田兼介(東京経済大)
2005-06-03

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