私の住んでいる新潟県十日町市松之山は、日本有数の豪雪地として知られるところである。聞くところによると、十日町市は日本有数どころではなく、人口5万人以上の都市では世界一の積雪なのだとか。2月18日には、今年の最高積雪292cmを記録した。これでも例年より少ないくらいというのだから驚いてしまう。こんなに雪が降ると、周りの景色は一変する。まず通勤路は両側とも雪の壁である。立山黒部アルペンルートの高さ20mの雪壁には及ばないまでも、雪壁の中を車で走るというのは面白い経験である。
そして、3mの雪に覆われた林は、下草や低木が完全に雪の下に埋もれてしまっている。そのため、道がどこだったかわからなくなっている。でも、そんなの関係ない。夏の間はヤブになっていて入れなかった場所でも、かんじきやスノーシューを履けばずんずん入っていくことができるので、好きなところを歩けばよいのだ。
雪の林は、一見すると生き物の気配のない、静寂の世界のように思える。せいぜいカラ類の群れが通り過ぎてゆく程度。昆虫もヘビやカエルも、冬眠したり卵や幼虫としてこの厳しい冬をやり過ごそうとしている。でも、よくよく探してみると、この冷たい雪の上でも活動している昆虫がいる。「雪虫」と呼ばれるセッケイカワゲラ、コシジマルトビムシなどのトビムシ類などである。
さて、雪上で活動する昆虫の動画がちょうどMOMOに登録された。一つが
「クモガタガガンボの雪上歩行」(データ番号: momo080204un01b)である。クモガタガガンボは名前は聞いたことがあったものの、動く姿を見るのはこれが始めてである。なるほど、雪の上を歩く姿は、クモに似ている(あるいはアメンボにも似ているかも)。もう一つが
「雪上ランナー・イマニシガガンボダマシ」(データ番号: momo080210ti01b)。「雪上ランナー」とはうまいこと言ったものである。
この2種はどちらも翅が退化している。そう言えば冬に出現する蛾であるフユシャクのメスも翅が退化している。冬に活動する昆虫の翅が退化するのは、おそらく何か意味があるのだろう。クモガタガガンボのメスは翅の筋肉があった場所に卵を詰め込んでいるという話なので、繁殖に集中投資する戦略かもしれない。
それにしても、なぜクモガタガガンボやイマニシガガンボダマシはこの季節に雪の上で活動しているのだろう?歩いて(走って)向かう先が気になるところである。これらの虫の生態はあまりよくわかっていないようなので、誰か調べてみては?
西 浩孝(十日町市立「森の学校」キョロロ)
2008-02-22