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もうひとつの系統 Letka Jenka

サルパの浮遊
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随分前になるが南極海のオキアミ調査に参加したことがある。海水温や塩分濃度などの垂直分布を調べると同時に魚群探知機でオキアミの分布を調べ,海洋環境とオキアミ分布の関係を明らかにする調査である。大きいオキアミの群れとおもわれる影が魚探に映るとトロール網を海中に投入して採取を行ない,その群れのオキアミの性別や体長,成熟度などの構成がどのようになっているかを調べていた。この調査はべつにオキアミを漁業として獲るわけではないから,とくに大漁でなくても一向に構わない。しかし,獲るからにはたくさん獲りたいというのが人情で,トロール網を投入して巻き上げていくときにはなんとなくわくわくし,大漁だと,その処理の手間がかかることを一瞬忘れて大喜びしてしまう。

こういうと,魚探に映ったのがなんでオキアミとわかるのか疑問に思うひとがいるかもしれない。じつはそのとおりで,映ったのがオキアミなのか他の生物なのか未知の物体なのかは,影からは区別できない。だから,トロール網を引き上げてみるとオキアミでない生き物がどさっと獲れることはままあることだったのだが,そのときにどさっと獲れるオキアミでない生き物の代表がサルパなのだ。魚探に濃い影がはっきり映って,トロール網もばっちりその深さに入って,引き上げる時のウィンチの手応えからも「オキアミ大漁間違いなし」と大喜びで網をあけてみると,大量のサルパだったりするとかなりがっかりする。

私は,山のように積み上げられたサルパしかみたことがなかったが,生きて動いているサルパの映像は「サルパの浮遊」(データ番号: momo080508us01b)でみることができる。説明文にあるように,サルパは脊索動物に分類される動物なのだが,これがまた妙な感じの生き物で,透明の寒天みたいななかに内蔵が見える。触ってみるとぷにぷにの固い寒天のようで,ひやしてつるんとくったらうまそうなのだが,実際は煮ても焼いてもくえないらしい。残念である。

この映像のなかにサルパが群体で泳ぐ姿がある。何個体もつながって移動していてまるでジェンカだが,そのうち海藻にぶつかって進めなくて困ったりしている。先頭がとまっていても後ろから押し合いへし合いするわけでもないから,先頭がとまったらとまったことが後ろの方にも伝わってるんだろうなきっと。説明によると,群体は簡単に引き離すことができるらしいのだが,どうやってくっついているんだろうか。ばらばらにしたらまたくっつくのかな。くっつくときの順番はそのたびに変わるのかしらん。

少し調べてみると,サルパの群体はどうも無性的に生殖した個体の集まりらしいのだが,サルパは無性的に増えるだけでなく,当然生活史の中には有性生殖を行なう時期がちゃんとある。まあ有性生殖と無性生殖を繰り返す生物はとくに珍しくはないから不思議ではないが,その切替えの機構というのはどういうものなのだろうか。我々は有性生殖しかしないからわからないが,そういう遺伝子がやっぱりあって,あるときそれが働きだすあるいは抑制されることで,群体で無邪気に増えてたのがある日性に目覚めてどきどきしたりするんだろうな。知らないけど。

いや,こんなことを少し考えたのは,脊椎動物の起源はナメクジウオ系統らしいという記事を読んだからである。ナメクジウオも脊索動物だが,サルパとは異なるグループで,我々はこちらに近いらしい。そして,我々とは異なる脊索動物のもうひとつの系統であるサルパはホヤと同じグループなのだが,ホヤにも群体をつくって無性生殖と有性生殖を繰り返すやつがいるのだ。ということは,もしも我々がナメクジウオ系統ではなくサルパ・ホヤ系統だったら,もしかしたら我々も無性生殖と有性生殖を繰り返しながら群体をつくる生活史をもっていたかもしれない。そういう世の中ってどんなふうなんだろな。同じ顔のひとが長い列をつくって,そういうのがあちこちでうねり歩いていて,わけのわからんジェンカ状態になってるところをカップルが「ぼくたちも昔はああだったね」とか眺めながらこちらもレットキス状態になってるのかな。それはそれで楽しそうな世界だが,残念ながら我々はナメクジウオなのだ。こんなことならもうちょとまともな名前をナメクジウオにつけたらよかったのにと思わんでもない。

ところで,このサルパの群体が泳ぐのをみると,スンクスのキャラバン行動を私は思い起こすのだが,スンクスの映像はまだ登録されていない。どなたかスンクスのキャラバン行動をお持ちならお願いします。
森貴久(帝京科学大学)
2008-06-20

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