最近、ウチのまわりでは夕方になると街中に「埴生の宿」が流れる。外で遊ぶ子供たちに「おウチに帰りなさいよ」と伝えているのだろうと思われる。この「埴生の宿」であるが、土でできたみすぼらしい家、の意だそうだ。そんなみすぼらしくってもやっぱり家は家。そんな素晴らしいおウチに帰りましょう、と。ちなみに「埴」とは粘土質の土のことで、これを紐状にしたものを輪っかにして積み上げて作るのが埴輪だ。
さて、動物の世界にも土で家を作るものがたくさんいる。例えば、
「土を集めるツバメ」(データ番号: momo070512un03b)ではツバメが巣材を集める姿、そして
「巣作りするツバメ」(データ番号: momo060501un01b)では集めた巣材を積み上げる姿を見る事ができる。ちなみに中華料理で有名な、いわゆるツバメの巣のスープに使われるのは、正確にはこの映像に映っているツバメと違って、アナツバメという別のグループに属する鳥の巣である。そしてこの巣は土でできているのではなく、唾液腺からの分泌物を固めたものでできているので、高級中華料理店に行く事があっても躊躇なく注文してもらってよろしかろうと思うところである。
土を使う事のメリットは、材料の入手が容易な事だ。一方、土は重い材料であるので、アシナガバチの巣のように、木からぶら下る巣の材料としては適さない。彼らの、いや彼女らの巣は
「巣材を集めるセグロアシナガバチ」(データ番号: momo080517un02b)や
「巣材を集めるキアシナガバチ」(データ番号: momo080517un01b)のように、木から繊維質を削り取ってきて唾液で固めたもの、つまりは紙のようなものを材料にしている。昔のどこかの国の人のようである。
水の中では土を固めると言うのはなかなかに難しい。
「イトヨの巣作り - 腎臓からの分泌物で巣材を固める」(データ番号: momo051103ga03b)によると、藻類などをやはり分泌物で固めて巣を作るらしい。
「キタガミトビケラの筒巣装飾」(データ番号: momo080331un01b)では、川の中を流れてくる様々な小片をキャッチしては巣材にしている様子が見られる。
と言う事で、動物においても私たちと同じように、周囲から材料を集めては組み立てる事で巣を作っているものがいて、そのような種は様々な分類群で見られることがわかる。一方で、動物の中には完全に自給自足で巣を作るものもいる(ここで巣と言っているのは、何らかの外部構造物の事で、例えば地面に穴を掘って作る巣の事は含んでいない)。先ほどあげたアナツバメもそうであるが、なんといっても外部材料無しに巣を作れる動物として代表的なものが、腹部から出す絹糸で巣を作るクモだろう。
「ワスレナグモの受信糸作成」(データ番号: momo080928cs01b)ではこの種の巣の構造の一部である受信糸を張る様子が見られる。しかし残念ながら、代表的なクモの巣である円網を張るところの映像はまだデータベースには登録されていない。というか、それを撮影して登録すべきなのは私だ。
話を埴生の宿に戻すが、この歌詞の中には「鳥は友」や「むしは友」というフレーズが出てくる。当データベース的には、なんだか親近感の湧く歌ではないか。なあ、ミズシマ。
中田兼介(東京経済大)
2009-04-03