動物の動物たるところは,従属栄養生物であることを考慮すれば,ものをくうところにあるのではないかと思う。で,ものをくうと,大抵の場合,すべてを消化しきれないから排泄することになる。だから,動物の動物たるところは排泄するところにあるといえるかもしれない。つまり,排泄行動は動物の最も動物たる行動ということになる。
というわけで,この動物行動の映像データベースで「排泄」に関係する映像を「簡単検索」の項目から検索すると(たしかに簡単に検索できる),2005年3月18日現在5件の登録がある。チンパンジーが2件で昆虫が3件である。5件というのは動物の動物たる行動の映像としては少ないような気もするが,それでも「排泄」ということを考えると,ちゃんと5件あるというのはむしろ立派といえるような気もする。
これらの映像はどれも興味深いのだが,ここでは昆虫の排泄行動を2つ紹介しよう。まずは「
「コナガ の排糞と排尿」(データ番号: momo050103px01b)」である。この映像を見ると,最初にコナガの幼虫が横向きでじっとしている。そのうちにもこもこと排泄孔から球状に糞がひりだされ,ある瞬間にポイッとはじきとばす。で,またじっとしたかと思うと15秒後にまたポイッと,今度は尿の水滴を排泄する。説明文によると,この糞と尿の排泄はセットになっていて,かならず一緒に起こるらしい。なんじゃそりゃ。
とはいえ,ヒトの場合でも排便する際には排尿も伴うような気がするがどうだろうか。もっとも,排尿の際に排便を伴うかというとヒトではそんなことはない。このコナガの場合も,糞の排泄に排尿が伴うのであってその逆ではないとしたら面白いのだがどうなのかしらん。
さて,もうひとつの映像は「
「ツノロウムシの甘露分泌」(データ番号: momo040112cc01b)」である。ロウムシというのは庭木などの樹皮によくついている白や紫のロウのなかにいる虫で,植物の組織液を摂取している。「甘露分泌」という何やらうまそうな響きすらただよう行動が排泄に分類されるのは,この「甘露」というのがじつはロウムシの摂取した食物のうちの不要な未消化物だからである。「甘露」というとなめてみたくなるのだが,排泄物となるとちょとなあ,と思わんでもない。
それはともかく,ロウムシなんてなかなか姿をみることがなく,この映像でも全身をみせることはしていない。映像を見始めると,何やら白いもやもやしたものの一部がちょと割れて茶色の筒がのぞいたかとおもうと,白い触手がするするとのびながら茶色の筒もにょきにょきとのびていく。おやおやおやとみていると突然触手が傘のようにパッと開き,でかい水滴がぽんっと現れたかと思ったら次の瞬間にはパッと消えて触手が閉じ,するするすると引っ込んで行く。なんじゃこりゃ。
こういう排泄をするのは,自分の周囲はロウで囲まれているから,排泄物はその外側へと排泄する必要があるためで,そのために筒がにょきにょきとのびるのだろうが,この触手はなんなんだ。と思い浮かぶのは,シャボン玉をつくるときにストローの先に切り込みをいれて少し開くと大きなシャボン玉をつくれるということである。あれと同じ構造がロウムシの尻にできてるのだろうか。うーむ。これからシャボン玉とばすときにはロウムシを思い出すことになるだろう。
もっとも,よくみると甘露の大きさからすれば触手が長過ぎるようにもみえる。これは甘露を大きくするよりは,確実に体外へはじきとばすために機能しているのかもしれない。これだけの長さがないと,映像に見られるように瞬時にポンッと消すことはできないのかもしれない。しかし,コナガの場合といいツノロウムシの場合といい,排泄物を豪快にはじきとばすのはいいなあ。ヒトだとかなりの迷惑になるが。
こういう映像できちんと撮影されている排泄行動には,そんなに汚さは感じない(そんなことないですか)。改めて生き物というのは面白いと思うと同時に,こういう映像を提供していただいた撮影者に感謝したい。
今回は排泄という少々下がかった尾籠な話題で申し訳なかったが,尾籠といえば英語でbelowという語にも「下のほう」という意味がある。もちろん偶然である。
森貴久(帝京科学大学)
2005-03-18