僕は光り物が好きである.光り物と言っても,今回は魚の話ではなく(アジとかキスも好きだが),ましてや貴金属でもない(こっちは全く興味がない).ホタルやヤコウチュウといった発光生物である.
僕が育った所は宮崎県の霧島の麓にあり,豊かな湧き水に育まれてカワニナやそれをエサとするゲンジボタルがたくさん生息していた.それを家族で見に行ったものであるが,その数は10万匹とも言われ,川に沿って林全体が光り,ウェーブするように光が動く様子は圧巻だった.
高校生のころになると,もっと色々な発光生物を見てみたいと思うようになった.そこで,親に海に連れて行ってもらってウミホタルを採集したり,ヤコウチュウを採集したり,発光バクテリアを培養してみたりした.発光バクテリアというのは海水にいるバクテリアだが,スーパーで売っているイカの切り身から単離して寒天培地で簡単に培養することができる.うまくバクテリアのコロニーが育つと,それが青白く光るのだ.まぁいずれも単に採集してその美しい発光を楽しんだだけで,残念ながら研究して何か面白いことがわかったというわけではない.
さて,発光生物が何のために光るかは,どうやら生物ごとに違うらしい.ホタルの場合はというと,雌雄のコミュニケーションのためである.
「ゲンジボタルの求愛と交尾」(データ番号: momo041024lc01b)を見ると,メスが草の上でお尻の発光器を点滅させているところへオスが近づき,強く数回光って求愛する様子がわかる.この時オスに対してメスが光り返したらOKサイン,光らなかったらゴメンナサイだという.(関係ないが,この映像ではバックに「がんばれ」といった音声が入っていて,撮影者の様子が伝わってきて面白い)
ホタル以外の生き物だと,ウミホタルは光る液を出して外敵の目をくらませるのではないかと言われている.ホタルイカの場合は,捕食者が見上げたときにシルエットが浮かび上がらないように,上からくる光と同じ強さの光を体の下面から発しているのだという(カウンターシェイディング).これには「うまいことできているなあ」と感心させられる.発光バクテリアの場合は,はて,どういう意味があるのだろう?むくつけき高校生を喜ばせるためでないことは確かだろうが……
発光生物が美しいのは,暗さとの対比があってこそだろう.しかし,ホタルの生息地でも街灯があったり,自動車のライトに照らされたりと,明るいことが多い.これにはホタルたちもさぞ迷惑しているのではと思う.どこもかしこも明るくするのではなく,ホタルの生息地くらいは彼らの恋を邪魔しないように暗いままにしておいてほしいと思う.
西 浩孝(京都大学大学院 理学研究科 動物学教室)
2006-07-14