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イカはどうして軟体動物なのか?

スジコウイカの求愛
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砂に潜るマテガイ
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ヨメガカサの退避運動
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高校生で生物の分類と系統を学ぶのは、高校の1年もしくは2年で生物 I の履修を終えて、高校3年になって生物 II を選択した生徒たちだけである。総合的な学習の時間が導入され、情報が教科として新設された現行の学習指導要領以前から、この状況は変わらない。高校生全体の中で生物 II を選択する生徒たちの比率は1割以下だと推定される。

 生物の分類は階層分類で、生物全体をまず五つの界に分ける。多細胞生物は動物界・植物界・菌界に、それ以外の生物は原生動物界とモネラ界に分ける。さて、イカの分類的な地位はというと、これは動物界の一員である。これから先はお経のように、界(かい)>門(もん)>綱(こう)>目(もく)>科(か)>属(ぞく)>種(しゅ)というレベル毎に、その所属を求めていくことになる。動物界>軟体(なんたい)動物門>頭足(とうそく)綱・・・というのがイカの分類的地位である。

 この軟体動物門には頭足綱の他に、二枚貝綱・巻貝綱・ヒザラガイ綱がある。受験を意識した高校3年生にとっては、こんな分類の授業は単に「ややこしいことを覚えるだけ」の印象が強いようだ。こちらは、それを知った上で生物多様性の素晴らしさを伝えようと、様々な工夫をこらす。スジコウイカの求愛行動「スジコウイカの求愛」(データ番号: momo040111un01b)のビデオを見せると、雄の熱烈な求愛をよそに、雌のつれない態度が思春期の生徒達の共感を呼ぶ。

 この派手な求愛行動を行うイカのビデオを見た後で、二枚貝であるマテガイが泥に潜る様子「砂に潜るマテガイ」(データ番号: momo050501ss02b)・巻き貝(かさ貝といった方がいい)であるヨメガカサが岩の裏に隠れる様子「ヨメガカサの退避運動」(データ番号: momo040420ct01b)を見せる。その後で、高校生に、「どうしてイカが軟体動物に分類されているのか、軟体動物の基本体制を変形して説明してごらん」、と問いかける。基本体制とは神経が腹側にあり、その上に消化管があり(咽頭で神経と交差する)、背中に心臓があり、体の後部に鰓がある図である。軟体動物らしく、背中には殻を背負わしてある。残念ながら高校3年生でこの質問に答えた者はいない。

 高槻市立桜台小学校で、小学校5年生になったばかりの生徒たちに、ビデオを見せる方法で軟体動物の大きなグループの解説をした。天神崎の臨海学習へ行くまでの事前学習である。そうすると、生徒の方からこちらに質問が飛んできた。「どうしてイカは軟体動物なん?」。そこで、くだんの軟体動物の基本体制をホワイトボードに描いた。「これを変形して、イカの体をつくってごらん」と答えると、5〜6人が元気よく手を挙げた。「高校生でもできない問題なのに、小学生ができるのかな?」。それじゃ君、やってみて下さい。

 殻を背側に高くのばし、足を腹側に分岐させながらのばす、これでできあがり。基本的な体制はそのままで、各部の比率の変化だけでイカの体制をつくることを、小学校5年生はやってのけた。これができるからイカは軟体動物なのだ。こんな経験を積むと小学校卒業までのある時期は、自然誌の学習に最も適した時期なのだという確信をもつようになってしまう。自分の過去に照らしてみると、小学生の時代に熟読した小学館の「魚類図鑑」が自分の血となり肉となって、その後のフィールドワークで役立ったのだ。

 皆さんの知り合いの昆虫少年が頭角をあらわしたのも、小学校時代ではありませんか?小学生が楽しみながら、困難な問題を楽々と解く場に居合わせると、こんな楽しみを高校3年生まで我慢させていることが間違いなのじゃないかと思います。この世の中には、びっくりするほど面白い生きものであふれているのです。この動物行動の映像データベースが、私にとっての「魚類図鑑」のようにいろんな人々の知的好奇心のよりどころになればいいなと思うのです。
広瀬祐司(大阪府立茨木高校)
2005-07-22

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