視る・想うRSS

[データベースホーム]

野次馬が見てる

ヤドカリの引っ越し
↑click to play

餌を探しているオニイソメ
↑click to play

 10年ほど前の話。一人暮らしをしている私のもとに姉から手紙が来た。実家の近所でボヤ騒ぎがあったそうだ。姉は気になって見に行こうとしたのだけれど、父親が「みっともない」と怒る様子が目に浮かんで居間に戻った。うちの父親はふざけたことや常識のないことが大嫌い。バラエティ番組を見ていたら「くだらん!」と吐き捨てて自分の部屋にこもってしまうような真面目頑固オヤジだ。でもやっぱり気になって気になってしょうがなかったので、こっそり裏口から出る事にした。夜道を小走りに行くと、向こうからどこかで見たようなシルエットが近付いて来る。「おぅ、もう消えたぞ」。父親だった。

 野次馬は何も人間に限ったことではない。動物でも何か変わった事があれば、周囲からわらわらと個体が集まってくることがある。

 磯で野外調査をしている時、足元で2匹のヤドカリがケンカしているのが目に留まった。はっきりしたことは覚えていないのだけれど、ちょっと大きめのオスがお前の貝殻をよこせと他のオスにけしかけているようだった。あれよあれよと言う間に周りに野次馬が集まってきて、小さな潮溜まりは格闘イベントさながらになっていた。結局大きい方がこうやって貝殻に移っている隙に「ヤドカリの引っ越し」(データ番号: momo030428pf01b)どさくさにまぎれて1匹の野次馬が乱入し、大きいのが捨てた貝殻にすぽっと入ってしまい、喧嘩を売られていたオスは野次馬が捨てたのに入らざるを得なくなってしまった。決着がつくとあんなにいた野次馬はちりぢりに離れていき、また平穏な潮溜まりに戻っていた。
 ほかにも夜中に活動するオニイソメ「餌を探しているオニイソメ」(データ番号: momo050310ea01b)をそっと撮影していたら、巣穴に潜っていた魚がたくさん出てきたことがあって、イソメが伸びたり縮んだりする様子をじっと見ていたのには笑ってしまった。無脊椎動物といえども自分の体より何倍も大きいと無視せずにはいられない。

 もちろんこれらは人間のように好奇心からというのではなくて、周囲を警戒しているとか、おこぼれに預かれるといったお得なことがあるとか、何かのスキを狙っているとかいったことで集まってくるのがほとんどだろう。

 余談だが、先ほどのヤドカリの喧嘩と野次馬たち、潮溜まりに貝殻を1つ放り込むと観察できることがあるのでぜひお試しあれ。
佐藤路子(大阪市自然史博外来研究員)
2006-06-02

バックナンバー

2005-04-15〜2005-07-22
2005-04-08
前後不覚
中田兼介(東京経済大)
2005-04-01
名は体を表す?
中田兼介(東京経済大)
2005-03-25
紳士的な動物もいれば……
西 浩孝(京都大学大学院 理学研究科 動物学教室)
2005-03-18
くえばでる
森貴久(帝京科学大学)
2005-03-11
食い逃げは心の中にある
中田兼介(東京経済大)
2005-03-04
自然界における「盗み」
藪田慎司(帝京科学大学アニマルサイエンス学科)
2005-02-25
動物に見習うこと
広瀬祐司(大阪府立茨木高等学校)
2005-02-18
冷蔵庫から消えた食材
佐藤ミチコ(京大瀬戸臨海実験所)
2005-02-11
食事しながら口説けますか?
石田 惣(福井市自然史博物館)
2005-02-04
フとゲンキになるシーン
繁宮悠介(長崎総合科学大学)
2005-01-28
理屈っぽい
依田 憲(京都大学大学院 理学研究科 動物学教室)
2005-01-21
くねくねと進む動物 - 脊索動物 -
井上 真(MOMO 運営ボランティア)
2005-01-14
ひったくりの恐怖
丑丸敦史(総合地球環境学研究所)
2005-01-07
ヘビは怖いか?
疋田 努(京都大学理学部動物学教室)
2004-12-31
サルの頃からついていた
森貴久(帝京科学大学アニマルサイエンス学科)
2004-10-22〜2004-12-24