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大学入試センター試験講評

ツユクサを訪れたニホンミツバチ
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ニホンミツバチの威嚇行動と集団内伝播
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ツユクサの花に訪れるミツバチとハナアブ
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ウメの花に来たニホンミツバチ
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本年度の大学入試センター試験が終わった、1月21日(日)に生物II・理科総合Bは9:30〜10:30までの1時間で実施された。翌朝の新聞に掲載された問題で、解答を試みる。新聞に印刷された小さな文字が、老眼の兆候がある眼には厳しい。職員室の片隅で、人の出入りの激しい場所で取りかかる。これは、プレッシャーがかかった状態で、問題がどのように受験者に受け取られるかを多少なりとも、受験生に近づいて体験してみようとの試みである。センター試験直前の授業で復習した、被子植物の重複受精・胚乳形質決定がほぼそのまま出題されている、受験生たちは喜んだだろうな。

 問題全体として、昨年並みの難易度が維持されている。メンデル遺伝学の問題が出題されているが、計算に手間取る連鎖・組換えではなく、遺伝子間の相互作用の良問だった。ただし、このような遺伝問題は問題文自体が長く、正確な読解に時間がかかる。良問であっても、時間的に追いつめられると解けなくなる恐れはある。このコラムで以前に掲載した典型的な動物行動学は出題されず(残念!)、ミツバチの吻の出し入れを題材に、神経の興奮と筋収縮を総合的に問うた良問が出された。長く語り継がれるであろう素晴らしい問題である。ミツバチという生物を知らない生徒が多くいることを意識して、大きなミツバチの絵が問題用紙に掲載されている。

 動物行動の映像データベースには、「ツユクサを訪れたニホンミツバチ」(データ番号: momo030314ac01b)がある、これを視ればミツバチはどんな形をしていて、どんな飛び方をするのかわかる。ツユクサと比較すると小振りな昆虫であることが分かる。「ニホンミツバチの威嚇行動と集団内伝播」(データ番号: momo031027ac01b)を視ると集団あなぐら生活をしているらしいとわかる、その集団はかなりの数になるようだ。さらに、これに擬態する昆虫もいる、「ツユクサの花に訪れるミツバチとハナアブ」(データ番号: momo040115ac01b)。働きバチはかなりせわしくブンブン音をたてて動き回る、こんなことがよく分かる「ウメの花に来たニホンミツバチ」(データ番号: momo060326ac01b)。現行の高等学校学習指導要領の下で、検定を通った教科書には「行動の羅列的な記載をしない」ために、一種の生物しか本文で取り上げられていない。多くの教科書出版社は、イトヨの求愛行動を掲載した。その結果ミツバチは、フリッシュの魅力的な研究の記載とともに姿を消した。

 今年度の授業では、センター試験対策が授業の主な目標である文系生物2クラスと、理科3科目をセンター試験で課す医学部志望者クラスを担当しているので、11月から授業時間中に過去に出題された問題の解き方を、論理的に解説してきた。第一線で活躍されている研究者が出題しているのだろうなという雰囲気の問題も多い。動物行動に関しては、模範解答の作成者がよく問題の本質を理解せずに、解答を作成していると感じられる問題集がなきにしもあらず。センター試験でいい点数が欲しいのならば、生物学という学問そのものに対する深い理解を目指すのが王道だろう。

 動物行動学・行動生態学なんて専門外という教師や、ふつうの受験生はいったい何をすればいいんだろう?MOMOを視よう、そうすれば野外で研究している動物行動学・行動生態学の研究者たちが何を考えて行動しているのかがわかる。彼らの書いた文章をそのまま、彼らの目線で撮影した動画とともに視ることができる。メールアドレスを公開している動画の登録者には、直接メールを書くこともできる。これからセンター試験の対策にかかろうとする人よ、教科書の正確な読解・問題文の正確な読解も大切だ、しかし、それを企画・構想・記載した教科書の執筆者・センター試験の出題者たちを意識の中に捉えられるようになってもらいたいものだ。
広瀬祐司(大阪府立茨木高等学校)
2007-02-16

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