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行動記載の客観性とコミュニケーション

寄生蜂のHost feeding(寄主摂食)行動
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タイトル下のボタンから,このデータベースについて説明した文章に進む事ができるのだが,その中に次のように書いてある。「(この)プロジェクトによって,(中略)動物の行動に興味を持つ全ての人のコミュニケーションがスムーズに進む事を願っています。」この願いは,今もスタッフ一同変わらないのである。

と思っていたところに,「寄生蜂のHost feeding(寄主摂食)行動」(データ番号: momo071002un01b)の登録があって,その解説にとてもうれしい記述を見つけた。これまでも素晴しい映像を多数登録していただいている大八木昭氏と高木一夫氏がこのデータベースを通してコミュニケートしておられるのである。

考えてみれば,どんな自然科学も対話と議論によって発展してきた。その対話は同じ何かを見ている者同士で行われなくてはならない。あたりまえのようだが,実際には同じ対象を見ていない者同士の間で長々とした議論が行われ,しかもそれを対話者自身が認識していないことも多いように思われる。自然科学の議論が,平均的に言って建設的であり得るのは,対話者の外に共通の実在があり,対話者達がその認識を共にしているからだろう(たから,議論対象の実在と定義を確認すること自体にも多くの努力が費やされたりもするのである)。

自然科学の対話者が共に眺めているのは,天体かもしれないし,素粒子かもしれないし,二枚貝や,タンパク質かもしれない。異なる者が同じ対象を見ていること,は自然科学としてなくてはならない前提なのである。

動物行動学ではどうだろう。この分野は動物の行動を対象にしている。だから対話者同士は「同じ行動」を見ていなければならない。とはいえ,両者は同じ時に同じ場所に居合わせるわけではない。しかも,行動は物ではないので,実物を送って見てもらうわけにもいかない。しかし,物でなくても,物理学が運動に対してそうしたように,現象を対象に科学を構築することもできる。それには,ガリレオがそうしたように,その現象の客観的な記述を工夫する必要がある。そうすれば,その記述を共有することで科学的な対話が可能になる。

そういうわけで,動物行動学にはなによりも,行動の客観的な記述(記載)が必要なのである。では,動物行動の記述の客観性はどのように保証されるのだろうか。

どこで読んだか忘れたのだが,たぶんローレンツだったと思う。客観的な行動記載が満たすべき条件を次のように述べていた(と思う)。「今,私が見ているこの白鳥の行動を文章に書き,それを海外の友人に手紙で送る。彼が,自分の目の前の白鳥を見て,『おお,これがローレンツの見た行動か!』と正しく認識できた」のなら,この手紙の記述はうまくいったのである。いかんせんうろ覚えなので,まったく間違っているかもしれないけれど,この考え方は興味深い。ここでは,記述の客観性の問題が,コミュニケーション可能性の問題に置き換えられてているのである。

動物行動学が,自然科学の一分野として生まれてから半世紀が過ぎた。今や私達は,手紙の代わりに動画を友人に送ることができる。このことは,この科学を,どう変えて行くのだろうか。
藪田慎司(帝京科学大学アニマルサイエンス学科)
2007-11-09

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