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ナメクジの味

スジブトハシリグモがオタマジャクシを捕らえたが...
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どうでも良い話だが、つらつらこのコラムの自分の文章を読み返してみるにつけ、昔の思い出話ばかり書いているような気がする。いつも私は「この動画を紹介しよう」と決めてから、何度もそれを見返しながら文章をひねり出そうとウンウンやっているわけだけれども、そうして出てくる物が昔語りばかりというのは、よっぽど私が後ろ向きの人間か、それとも動物行動の動画は記憶の喚起力が強いのか。

今回思い出したのは、ナメクジだ。私がまだ6-7歳だった頃、寝る前に歯を磨いて、さあ口を濯ごうとした洗面所での事。当時住んでいた家は昭和の初期に建った木造平屋建て。そこら中すき間だらけで、床に落ちたせんべいクズなんて掃除しなくてもアリが勝手に持っていってくれたし、昼寝してたら肩をムカデがはい回るし、お風呂に入ってみると排水口からコオロギが出てくるし。で、家というのはどこでもそうだが水まわりはだいたい北側の湿ったところにある。我が家も御他聞に漏れずそうであった。そこに、今でも鮮明に思いだすのだが、当時「最初のパンダは白かった云々」というCMに出ていたパンダのキャラクターが描かれたプラスチックのコップがあって、全く気が付かなかったが、中にナメクジがいたのである。で、それに水をたっぷり注いで口を濯いだわけだな。げーーーーーーーーーーっ、という。

で、この記憶を呼び起こした動画が「スジブトハシリグモがオタマジャクシを捕らえたが...」(データ番号: momo070601un01b)である。ハシリグモの中には水辺で水中の生物を食べているものがいるのだけど、この映像ではオタマジャクシが餌になっているのである。で、水辺で餌を採ってそのまま半分餌を水に浸けながら食べていると、周囲からヒルが寄って来て、見るもぎゃーーーーっと言いたくなるような光景が現出する。いや、私みたいに生き物観察を生業にしているとヌタヌタグチャグチャには免疫が出来てくるものだけれども、今回だけは不覚にも声を上げてしまったのだな。こう、口の中に感じる柔らかい不定形な生き物の感触(いや、形はあるけど)。最終的に餌を落としてしまうハシリグモさん。あなたの気持ちは私にはよくわかるよ。

しかしそういう感傷的な事は抜きにしてみると、少しこの映像には不思議なところがある。というのは、クモは体外消化という食べ方、すなわち餌の体内に消化液を送り込んで組織を分解したものを吸い込むと言うやり方をするのである。ということは、この映像でオタマジャクシに体を突っ込んで蠢きながら食べているヒルもその消化液を浴びているはず。なぜ平気で動き回れるのだろうか?もう消火液が効かなくなっている?それともヒルの体表はとっても強靱?はたまた実は半分溶けながら食べている?

それはともかく話をナメクジに戻すと、私はそれ以降ナメクジとは何度も闘ってきた。高校生の時にスイカを栽培したのだけれど、梅雨時に植えた苗をナメクジが食べないよう、雨がそぼ降る夜中に懐中電灯の光で苗についたナメクジを一匹一匹潰してみたり、長じてベランダにいたナメクジをカメの餌にしようと水槽にほりこんだら大量の粘液を吐き出されて往生したりだ(自分はイヤなくせにカメにはナメクジを食べさせるのか?という非難は受け付けません)。彼奴らと心温まる交流をしたことは、まだ一度も無い。

で、ますますどうでもいいが2007年11月現在、データベースにナメクジの映像はまだ一つもないのである。
中田兼介(東京経済大)
2007-11-16

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