私は非常勤講師もあわせると4つの大学で教養の生物の授業を担当した事があるのだが、そのうち二校で期末レポートとして「何か自分の好きな生き物を一つ選んで、その生き物が知的生命体に進化したとしたら、どのような社会が出来上がるか想像して書け」という課題を出した事がある。これは手塚治虫の「火の鳥」にある、ナメクジが知的生命体に進化するという話からインスパイアされているのだな。
当方としては、講義の中で色々な動物の生態を紹介しているわけだから、その一つをネタにして話を膨らませてくれる事を期待していたのだが、提出されるレポートを読むと、やれヒトが滅亡した後イヌとサルが地球の支配権を争って最終戦争をするだの、最初はいがみ合っていたネコとネズミがある時争いの空しさに気づいてからは平和裏に暮らしましただの、と登場する動物の特徴とお話の展開とが全く関係ないものが多くてがっかりしたものである。
さて
「クロサンショウウオの配偶行動」(データ番号: momo030617hn01b)である。この映像では一匹のメスにたくさんのオスが群がっている場面が写っている。そんな彼らは子作りの真っ最中なのだ。サンショウウオは体外受精をする。つまり、交尾をしてオスがメスの体内に精子を送り込むのではなく、メスが水中に卵を放出した後に、オスが精子を振りかける事で受精が起る。で、今ここに産卵しているメスがいれば、周辺のオスは近寄ってきて精子を放つだけで人の子の親、じゃなくてサンショウウオの子の親になる事ができるのである。もしここにケンカの強いオスがいたとしても、他のオスの放精を完全に防ぐ事は難しいので、結果として映像にあるような状態ができあがる。
もし、このようなサンショウウオが知的生命体になったら、その都会にはきっとあちこちに水槽があって、年ごろになった若い男女が集まってきては押し合いへし合いするのだろう。そんな彼らに果たして嫉妬はあるのだろうか?無いのだとしたら、うらやましいような、でも少し味気ないような、はて一体どっちなのだろう?
中田兼介(東京経済大)
2004-10-29