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ひったくりの恐怖

アオオビハエトリの略奪行動
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なんでも大阪は日本一ひったくりの多い都市らしい。大阪府警は日夜ひったくり撲滅にむけ奮闘しているとのこと。がんばって欲しいものである。

話は全く変わって、私が小さかった頃、実家では庭で数匹の猫たちを飼っていた。いつも猫たちは庭中を走り回って遊び、お腹がすくと窓の近くでニャアニャアないて餌をねだり、満腹すると心地よい場所を見つけては気持ちよさそうに眠るというなんともうらやましい生活をしていた。

普段、うちでは猫用のドライフードを与えていたのだが、お正月など人間が贅沢をするときは猫にもお刺身の残りをあげたり、ちょっとした贅沢をさせてあげた。贅沢は猫の性格をも変えてしまう。ドライフードをあげるときはおとなしく待ち、お皿の上で食べるのだが、お刺身の時には少し事情が違ったのだ。箸からひったくるようにお刺身をくわえて奪いダッシュ、少しはなれたところまで持っていき、こちらや他の猫に背を向けるようにして「う〜っ」と唸りながら食べていた。なにもひったくりのようにとっていかなくともお刺身あげるのに...と思いながら見ていたものだった。

「アオオビハエトリの略奪行動」(データ番号: momo020619sv01b)はそんな子供のころの記憶を呼び覚ましてくれる。この映像、アオオビハエトリのひったくりの様子を見事に記録しているのである。まず、アミメアリの行列の前で、卵や幼虫、さなぎを運んだ働きアリが通るのを待っている。このときのお尻(お腹だけど)を振ってる様は猫が獲物に飛びつこうと後ろ足をもじもじさせる様子を彷佛させる。

次に、目的の卵などを持った働きアリを見つけると猛然とダッシュしてアリの目の前に立ちはだかり、びっくりした(様にみえてしまう)アリの手(口だけど)から子供たちをひったくっていく。人のひったくりはこっそり後ろから近付いて荷物を奪うことが多いようだが、アオオビハエトリは前にまわって奪うようである。三番目の映像では通り過ぎたアリを長い距離しつように追いかけて子供を奪う様子が映し出されている。

さて今回問題にしたいのは、ひったくった後の行動である。アリの子を奪ったアオオビハエトリはダッシュでアリの行列を離れる。まるで猫がお刺身をくわえて逃げるように。面白いのは二つ目の映像でアリの行列に近付いたもののアリが子供を運んでなかったときの行動だ。子供が運ばれてないことに気付いてもすぐにアリの列から離れようとはしない。逃げるのはやはり子供をさらったあとである。

なぜ逃げなきゃならんのか?猫の場合、逃げて別の場所でうなりをあげ周りを威嚇して刺身を食べていた。これはやはり他の猫による餌の強奪を警戒しているのであろう。ではアオオビハエトリは何を恐れているのか?

きっと働きアリによる子供の奪還をおそれているに違いない。映像ではよ〜く見ると働きアリがアオオビハエトリを追いかける様子が二〜四番目のひったくりの際にみてとれる。そう、ひったくりが最も恐怖するのは、相手に奪い返されてしまうことなのだ!だからこそ、追手からすばやく逃れるという行動がみられるのであろう。きっとアオオビハエトリも奪い返されることのない安全な場所でアリの子を食べるに違いない。

ちなみに人のひったくりの場合は、公衆トイレで中身の抜かれたバックなどが見つかることが多くあるらしい。公衆トイレは安全な場所なのかしら?大阪府警さん、ひったくり公衆対策でトイレの見張り強化を!(←論理矛盾はないがなにか違う気が...)

閑話休題。アオオビハエトリや猫の逃走行動は食料が誰のものなのか食べきってしまうまで決定しないという状況下で起こりうる。一方、人の社会をみると、どこの家庭でも子供が家でご飯をひったくるようにとっていき自分の部屋でこそこそ食べたりしたら、その場で親にひっぱたかれ、まず一日は飯抜きの刑に処されるであろう(最近の親御さんはそこまできびしくないか。でも子供の頃のうちでは確実にそうであった)。人にとって個々人の食べ物が強奪されることがない状況下では作法をまもって食べることこそが大切(美徳である)らしい。

しかし三人の兄姉を持つ私には、常に兄姉による食料強奪の危険にさらされていた。そんな私のとった戦略は「食べ物をもって逃げる」ではなく「兄姉の強奪を見張る親の目の前でいつもご飯を食べる」であった。安全な場所はどこか遠くではなく親のいる場所だったんだなあ。親のご加護によって私は作法を身に付けることができたのだ。感謝、感謝である。

うちの猫たちも普段からもっと贅沢させてあげていたらあんな行動をとらなかったに違いない。チビよ、ウスよ、ガラよ、甲斐性がなく上品に育ててあげられなくてごめんね。
丑丸敦史(総合地球環境学研究所)
2005-01-14

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