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理屈っぽい

カモの採餌と水飲の意志決定(実験の映像)1
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カモの採餌と水飲の意志決定(実験の映像)2
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世の中には理屈好きな人がいる。パンゲア大陸、それは陸続き(のっけから冒険してみました)。研究者と呼ばれる人種には特に多くて、学会やゼミなどの集会、はてはお茶の時間にまで、理屈(屁理屈や詭弁も含む)が飛び交う。巣を飾らずにはいられないアズマヤドリのオスのように、理屈を付けずにはいられないのである。多くの研究者は、研究者ではない人から「理屈っぽい」と言われるか、言われなくても思われた経験があるはずだ。

これが高じて、数学的な模型(モデル)を作ってもっときっちりと、自然現象を説明しようとする研究者も多い。これは、本物の戦闘機を手に入れるのが難しいから、プラモデルをつくって我慢する、といった動機とは違う。直立二足歩行ロボットを作ると、人の歩行についてより深く理解できる、に近いかもしれない(直立二足歩行ロボットを作ったことがないので想像だ)。かの故メイナイード・スミス教授はこう言っていた。「My greatest happiness in science has come when some animal is found doing something odd, that was predicted by the theory」そうそう、それ!その指向性ですよ!動物の行動なんていい加減そうなものが、数式でカチっと説明できたり、予測できたりすると、もうブラボー!てなもんである。

さて、ちょっとクールダウンして、「カモの採餌と水飲の意志決定(実験の映像)1」(データ番号: momo010929dv01b)「カモの採餌と水飲の意志決定(実験の映像)2」(データ番号: momo010929dv02b)を見てみよう。撮影者の説明によると、「採食行動中に見られる水飲み行動の頻度と持続時間は、採食場所と水場の距離の影響を受けるだろうと予測される」とある。ここでは日本語での説明しかないが、日本動物行動学会で拝聴したときには、数式で説明されていた(最適採餌モデル、と呼ばれるものの一つである)。エサ場と水場の距離が遠くなったり近くなったりすると、カモはそれに合わせて、食べる時間や水を飲む時間などをじょうずに(効率がよいように)変える、という話だ。しかし、写真を見ると、映像1と2で距離がそれほど変わらない(30cmくらい?)。見て分かるほど、カモは食べる時間や水を飲む時間を変えるのだろうか?そして、その時間はシンプルなモデルで説明できるのだろうか?

二つの映像を並べて再生してみる(動画をダウンロードしてから再生するか、ブラウザのウィンドウを二つ開いて再生してみよう)。すると、カモの動きが全然違う!エサ場と水場が近いと、せっせと両者を往復する。遠いと、たまにしか移動せず、食べる時間も水飲み時間も長くなる。この時間の違いは、作成した最適採餌モデルでちゃんと説明されるようだ。鴨川でダラダラとエサを食べているように見えるカモも、最適採餌しているかと思うと、ちょっとクールに見える(見えませんか?)。

モデルを使った研究や論文は星の数ほどあるのだが、このカモの映像のように、モデルの予測を目で見て実感できる機会は少ない。こういうのは動物の行動を研究する際のモデルの有効性を感じる一助になるし、理論や理屈の楽しさを知るきっかけになると思う。そうか、楽しいから「理屈っぽい」のだ。
依田 憲(京都大学大学院 理学研究科 動物学教室)
2005-01-28

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