ある目的のためのものを別の目的で使うというのは結構良いなと思う。何というか、慎ましやかであるし、賢い感じがする。
産卵管というと、その名の通り産卵のためのものである。これを他に何に使うというのか。ところが、
「ナモグリバエ成虫の食事」(データ番号: momo050306ln01b)を見て、こんな使い方があったのか、とびっくりする。ナモグリバエのメスは、産卵管でキャベツ(のように見える)に穴を開け、そこからにじみ出た汁を吸うのである。産卵管を引き抜いた後、急いで吸いにいくところがいい。「急いで口で吸え」。そういえばスネークマンショーのネタにそんなのがあった。(本当はナモグリバエは吸うのではなくてなめているのだが。)
ダイズサヤタマバエの産卵管の使い方も一風変わっている(
「ダイズサヤタマバエの産卵」(データ番号: momo050101ay01b))。いや、彼らはちゃんと産卵のために使っている(ちゃんとというのもおかしいが)。彼らはダイズに卵を産卵管で送り込む。ただ彼らはこの時、別のものも一緒に送り込む。共生菌である糸状菌を同時に注入するのだそうだ。この糸状菌はダイズの中で成長し、幼虫の食料になる。だから、産卵管が太くなっている。このただ太くしたという工夫がいい。ちょっとした工夫で、ほらこんなに便利。庶民の智恵である。
ワタムシヤドリコバチも面白い(
「産卵にじゃまな翅は畳んでしまう」(データ番号: momo050102am01b))。産卵管ではなくて産卵管鞘なのであるが、これで羽をひょいと持ち上げて折り曲げるのである。なぜこんなことするのかというと、産卵の時に羽が邪魔になるからなのだそうだ。この折り曲げ方が、折り目正しくて、なんというか、キャシーンッ!と音が聞こえてきそうである。つまりキチッとしていて中途半端なところがない。邪魔な羽を持ち上げるだけなのだが、用が果たせればいいもんね、という間に合わせ的な態度とは対極にある仕事ぶりなのである。
彼らは、それぞれの必要があり、それを解決しなければならなかった。だか、そのために何か特別な装置を作ろうとはしなかったのである。あるものを工夫してなんとかしたのである。ミニマリストなのである。話は跳ぶが、バックパッキングやシーカヤックの旅では、荷物は少なく軽くしなくてはならないから、その装備においても旅の仕方にしてもミニマリストになる。体の小さな昆虫もそうなのかもしれない。ミニマリストの工夫は、どれも素敵で、どこかユーモラスだ。
藪田慎司(帝京科学大学アニマルサイエンス学科)
2005-07-29