このデータベースの映像は、教育目的であれば自由にダウンロードして使ってよいことになっています。(ただし、使用時にデータベース名と著作権者名を明示することをお願いしています。詳しくは利用規程をご覧下さい。) 運営側としては、どんどん教室で使っていただきたいと願っているわけですが、登録映像がこれだけ多くなると、どんな映像があるかなかなか全体像はつかめないことと思われます。このコラムを、そんな時に映像を探す手がかりとしても使っていただければと思うわけですが、今回はよりストレートに、私が個人的に講義で使っている映像を紹介してみます。あくまで、個人的な使用例ですけれども。
私が講義をするのは、主に大学生に対してですが、高校生や一般の方向けにお話しすることもよくあります。高校生から一般の方まで「受ける」映像にあまり違いはないようで、よく使うのは
「アデリーペンギンのジャンプ」(データ番号: momo021121pa01b)です。この映像は、つかみとしては実に強力で、まずはずれることがありません。
海面から、突然まっすぐに飛び出してくるペンギン。奈落から飛び出してくるかのようなスピード感。その驚きが静まらないうちに、パラ。パラパラパラ。と数羽が続き、やがてドワー、水しぶきも凄まじく、ペンギンの群が飛び出してきます。スペクタクルです。それぞれのペンギンが放物線の頂点を過ぎたあと、羽ばたくところも愛らしく、最後に、氷にぶつかって落水するペンギンがいるという「落ち」もあって、出来過ぎです。同じシーンがスローで繰り返されるという編集がされていて、これも効いています。講義ではこの繰り返しのところでさらに大きく「ワッ」ときます。音がモゴモゴするのも素敵です。
最近では
「ミシシッピーアカミミガメの求愛行動」(データ番号: momo041023ts01b)が素晴らしい素材です。ただし、こっちはスペクタルというよりも、微妙なところが持ち味で、ただ流しているだけでは面白さに気がついてもらえないかもしれません。しかし、いったんカメの手先がヒラヒラと動くところ、そこに気がつけば、この映像は見所満載で、実に味わい深いのです。ペンギンにけっして負けていません。
オスは、メスが水面から顔をあげている時には、ヒラヒラしません。彼女の顔を見つめるかのようにじっと待っています。メスが水面に顔をつけると、すかさずヒラヒラします。彼女が無視して泳ぎ出すと、必死で前に回り込もうとします。とにかく、彼女に見てもらいたいらしいのです。彼が本当にしたいのは、映像クリップの最後に出てきますが、両手をそろえてヒラヒラすることなのでしょう。逃げる彼女を追いかける間、本当は両手でヒラヒラしたいのだけれど、前に回り込むために片方の手は泳ぐのに使わざるを得ない。それで、片手だけでも、とにかくヒラヒラ、ヒラヒラ。これをけなげと見るか、しつこいと見るか。
南極も近所の池も、どちらもそこに暮らす動物にとっては、日々の暮らしのための「普通」の場所でしょう。そして、その日々の暮らしを営んでいるのは、アデリーペンギンやミドリガメといった抽象的な動物種というよりも、見事にジャンプしたり、氷にぶつかったり、片手で泳ぎながらもう片方でヒラヒラするような、それぞれの個体です。映像を見て笑っている人たちを見ていると、そのことが伝わっているように思います。私達は、それぞれの個体に共感することで、その個々の日常に触れるのでしょう。動物行動学のとても大事な部分のような気がします。
藪田慎司(帝京科学大学アニマルサイエンス学科)
2006-04-21