中学生の頃、卓球部に所属していた。温泉でしか縁のない向きには驚きかもしれないが、卓球は意外に運動量の激しいスポーツで、体力を消耗する試合を乗りきれるよう、あの頃は毎日のように10キロ近く走らされていた事を思い出す。陸上部よりたくさん走ってたのってどうよ。
それだけじゃなく、毎日毎日ラケットを振り回してもいた。そのせいか知らないが、今の私は右腕が左腕より少し長い。これはこれで不便なもので、左腕に合わせて服を買うと右袖がつんつくてんになるし、右腕に合わせると左袖が余ってしまう。こんなことなら、両手にラケットを持って二刀流で練習していれば良かったと思うも後の祭りだ。しかしそもそも、両手にラケットを持って競技をする事はルール的に可能なのだろうか?いや、もし可能だったら香港あたりで少林卓球とか作られていたに違いないわけで、それが無いところをみると、きっとルールブックのどこかに二刀流禁止とか書いているのだろう。ルールなんて本当につまらないものだ。
それはともかくとして、そんな右腕だけ大きく発達した私だけれども、ひょっとしたら遺伝的には左利きなのかもしれないと思ったりすることがある。その事を初めて疑ったのは、ボウリングでふざけて左手で投げてみたら見事にストライクを決めてしまい、その後調子に乗って一ゲーム左手だけでプレイしてみたときだ。右手と同じくらいのスコアが出せたのだな。はて?と思って左手で箸を使ってみると、これもちゃんと使えるじゃないか。そして私の父親は左利きだ。
よくよく見ると、私の子供も小さい時は右手も左手も同じように使っていた。しかし、トレーニング用の強制箸が右利き用だったせいで、最近箸は右手で持つようになったのだ。してみると、私もまだ記憶のない頃に矯正されて右利きになったというのは、いかにもありそうなシナリオである。いや、別に「オレはありのままのオレでいたかった!矯正なんてくそくらえ!」と言いたいわけではない。逆に右手がケガした時のバックアップに左手が使える状況は便利だから、むしろありがたいと思う。
で、
「両方のハサミ脚が巨大化したハクセンシオマネキ(1)」(データ番号: momo070127ul01b)と
「両方のハサミ脚が巨大化したハクセンシオマネキ(2)」(データ番号: momo070127ul02b)である。右利き左利きのある動物といえば、シオマネキにとどめを刺すというくらい有名な動物である。しかしながら、不勉強な私はこの映像を見るまで、二刀流のシオマネキが存在することを一ミリも知らなかった。というか、オスのシオマネキは専ら小さなハサミで餌を食べるのであって、通常大きなハサミがどちらか片方にしか無いのは、そうでないと餌が食べられないからだと信じて疑ってなかったのだな。でも、食べれるやん。しかも二刀流。小さい片手だけで食べてるより効率良く食べられる可能性だってありそうだけれど、そうじゃないのだろうか?
シオマネキはそのハサミを上下に振る行動からシオマネキと呼ばれているわけだけれど、これは求愛や闘争のためのディスプレイらしい。ディスプレイであれば、より強い刺激を出した方が効果的と言うもの。この映像のように二刀流でハサミを振れば、モテモテかつ無敵なシオマネキになれるのだろうか。でも、だったら世界が二刀流のシオマネキであふれ返るに違いないわけで、それが無いところを見ると、きっとルールブックのどこかに二刀流禁止とか書いているのだろう。
それはともかく、二刀流のウェービング映像で大変興味深いのは、両方を同時に動かす神経生理的なメカニズムはどのようなものなのか?ということである。ハサミの動きが中枢神経に完全にコントロールされているのであれば、ハサミが大きかろうが小さかろうが右を動かすと決めれば右しか動かさないということが起りそうなものだ。そうではなくて、両方大きなハサミだとつい二刀流で振ってしまうということは、それはひょっとしてハサミがウェービングをコントロールしていると言うことなんじゃなかろうか。
卓球でもある程度練習を重ねると、玉が飛んでくる方向に意識よりも先にラケットが動いていくという経験をするものだけれど、でも、これはシオマネキの二刀流ウェービングとは違うメカニズムなんだよねきっと。
中田兼介(東京経済大)
2007-07-06