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急がば走れ

アナグマの歩き方
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サルの群れの移動とサルの歩き方
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放獣映像からみるタヌキの歩き方、走り方
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アナグマに万歩計をつけたことがある。アナグマの行動調査として,捕獲した個体にGPS信号受信機と万歩計を装着して,その個体の行動範囲や活動量を調べようとしたのだ。いまの世の中イヌ用のものが販売されているのだが,そのときはそれに気がつかず,ヒト用の万歩計をハーネスを利用して装着した。いろいろあったがその万歩計は無事に回収されたのだが,さてどのくらい歩いていたのかというと,なんだかある一日分と思しき数百歩しか記録が取れていなかった。ヒト用の万歩計だから,ヒトの歩きに換算するとその半分である。その間のGPS信号による移動を考えると,アナグマの歩幅は相当なものになり,つまりかなり大股で歩くことが推測された。ほんとか?

もちろん嘘である。「アナグマの歩き方」(データ番号: momo070526mm02b)をみるとわかる。どうも万歩計の装着位置が適切でなかったようで,それはそれで残念だが,この映像はなかなかおもしろい。というのは,解説文にあるように,2つの歩き方が確認できるからだ。

解説文によると,小走りっぽいときつまり速度が速いときには,左前足(右前足)と右後足(左後足)をほぼ同時に接地させて,残りの2脚は接地させないのに対し,速度が遅くなると3脚を接地させて1脚だけを右前足→左後足→左前足→右後足→右前足→・・・という順番に接地させていく。これはそれぞれ,「サルの群れの移動とサルの歩き方」(データ番号: momo070320mf01b)「放獣映像からみるタヌキの歩き方、走り方」(データ番号: momo070317np01b)にある歩き方と似ているといっているが,じつはアナグマにみられたこの2つの歩き方は,それぞれがウマの速歩(trot)と常歩(walk)に相当しているのだ。

ウマの歩行様式には4種あって,それぞれ遅い方から常歩,速歩,駈歩(canter),襲歩(gallop)という(残念ながらMOMOに映像はまだない)が,移動速度が速くなるについて接地する脚の数が減っていく。このときの移動速度と歩行様式と消費エネルギーの関係を調べると,移動速度が変化するにつれて,効率の良い(消費エネルギーあたりの移動距離が大きい)歩行様式が次々に移り変わっていくことがわかっている。ウマではそうなのだが,アナグマでも(そしてたぶんタヌキでも)移動速度の変化に対して同様な歩行様式の切替えが起きているのはおもしろい。たぶん四足歩行で移動する場合にはかならずそういうことになるんだろうなきっと。知らないけど。

ヒトは二足歩行だが,やはり歩きと走りは歩行様式が異なり,歩きのときはどちらかの脚が地面に着いている。急ぐときにどちらかの脚を接地させておかなければならないとしたら,とてもコストがかかることはすぐにわかるだろう。

それをしなければならないのが競歩という競技なのだが,調べてみたら競歩の最短距離は20kmなのね。それも,トラックで行なう20000m競歩とロードで行なう20km競歩があるらしい。それの世界記録が最も速い歩く速度だとして速度を算出すると,4.3m/s(15.5km/h)になる。最も速い走る速度を100m走から計算すると10.3m/s(37.0km/h)だから走る方がおよそ2.4倍速いことになるのだが,なんか思ったよりは走るのが速くないというか,歩くのもずいぶんやるじゃんって感じだ。もっとも,100kmマラソンの世界記録から計算すると,これだけの距離を走るときの平均速度はさすがに4.5m/s(16.1km/h)に落ちるのだが,それでも走る方が速い。急がば走れということだ。
森貴久(帝京科学大学)
2007-11-23

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