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どうしてムシは細長い?

餌を探しているオニイソメ
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カマキリから脱出するハリガネムシ
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激しく体をくねらせる線虫
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オオイカリナマコの摂餌行動
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コウガイビルの移動
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ホシムシの摂餌行動
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先日、博物館の観察会で、常連さんが「はい、ミミズ〜」といってわたしのところに持ってきた。学芸員というのは担当分野というのが決まっていて、わたしは「無脊椎動物(ただし昆虫とクモを除く)」というムシの担当だと決められている。だからミミズを持ってこられたのだけど、かといってミミズについて滔々と語れるかというとそうではない。語れるに越したことはないのだけど、そこまで勉強が追いついていない。

無脊椎動物という大ざっぱなカテゴリーには、とてもたくさんの分類群が含まれる。岩波書店の生物学辞典(第四版)という本を見ると、無脊椎動物には少なくとも33の「門」が含まれている。昆虫を除いたとしても、ここに含まれる種数は想像するだに恐ろしい。一方、わたしの職場には動物分野の学芸員が他に2人いて、1人は主に鳥類と哺乳類、もう1人は魚類と両生爬虫類ということになっている。つまり、2人で1つ(解釈によっては1つに満たない)の門しか担当していなくて、これはとても不公平なことである。と言うつもりはないのだけど、1つの博物館に66人とはいかなくても、10人くらいムシ担当学芸員がいてもいいような気はする。

それはさておいて、ミミズを眺めながら思うに、これらのムシには特徴があって、それは細長い生き物が多いことである。磯にすむ環形動物のオニイソメは1メートルを超えることもあるというし(1)、ハリガネムシは名前のとおり針金みたいだし(2)、ずばり線虫というムシもいる(3)。これは明らかに収斂のなせる業とみてよさそうだ。なぜムシは細長いのだろう。

まず、食べ物の流れが一方向になることが大きいかもしれない。生き物は物を食べた以上、体の外に出さないといけない。排泄物はその生き物にとって二度と取り込みたくないものなので、口と肛門はできるだけ離れている方がよくて、おそらくその位置関係は体の対極になる。この2つの器官の反発性は、体を細長くするプラスの力になりそうだ。ナマコの体は先頭に口、最後尾に肛門があって、消化管に皮を巻いたようなものと言っても差し支えない(4)。

ところが、コウガイビルなど、細長いムシの中には肛門を持たないものもいる。となると、もう一つの理由は移動に有利、ということかもしれない。狭い場所をくぐり抜けるには断面積は小さい方がいい。一方で体の体積を確保するとなれば、それは細長くなるしかなさそうだ。コウガイビルはふだん土壌のすき間にすんでいるし(5)、ハリガネムシは、細くないと宿主の体には入り込めない(2)。

しかし、逆説的ではあるのだけど、移動しなくてもやっていける体を突き詰めると、やはりムシは細長くなるのかもしれない。ある1点に留まってできるだけ遠いところまで生活圏を確保しようとするなら、それは口やペニスを長くするか(6)、体全体を長くするしかない(7)。

と、いろいろ考えてみた。しかし、これらはムシがなぜ細長いかという答えにはなり得るものの、ムシ以外の生き物、つまり細長い脊椎動物が相対的に少ない(あるいは、細長い昆虫やクモも少ないように思う)ことへの答えにはなっていないのである。ひょっとすると、体を支える骨格の有無が関係あるのだろうか。仮に体を細長くしたいと思っても、骨格はかえって邪魔になるのかもしれない。いったん骨格を持ってしまったら、もうニョロニョロの体には戻れないということか。なんだかさびしいなあ。

と感慨にふけっていたら、ミミズはわたしの手からニョロニョロと滑り落ちて、土の中に消えていった。


(1):「餌を探しているオニイソメ」(データ番号: momo050310ea01b)
(2):「カマキリから脱出するハリガネムシ」(データ番号: momo041015ns01b)
(3):「激しく体をくねらせる線虫」(データ番号: momo050215un01b)
(4):「オオイカリナマコの摂餌行動」(データ番号: momo030603sm01b)
(5):「コウガイビルの移動」(データ番号: momo050224un01b)
(6):(movieid:momo060808bk01bはリンクが消えています)
(7):「ホシムシの摂餌行動」(データ番号: momo050303ps01b)
石田 惣(大阪市立自然史博物館)
2006-08-11

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