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一筆啓上仕り候

キジの雄のディスプレイ
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今回のタイトルを見て何の話かピンと来た人は、ある程度鳥に詳しい人だろう。そう、ホオジロのさえずりの聞きなしである。

「聞きなし」というのは聞き慣れない言葉かも知れないが、鳥や虫の声を人間の言葉に置き換えたものである。難しく言うとオノマトペ Onomatopee と言うんだそうな。代表的なものを挙げると、ウグイスは「ホーホケキョ(法、法華経)」、コノハズクは「ブッポーソー(仏法僧)」、ツクツクボウシは「ツクツクボーシ(ツクツク法師)」といった具合である。当たり前の話だが、生き物は決して「ホーホケキョ」とカタカナで鳴いているわけではなくて、人間が勝手に言葉を当てはめたわけだ。

そして、聞きなしの中には確かにそう聞こえると納得できるものも多いのだが、中には無理矢理感のあふれるものもある。その一つがホオジロのさえずり「一筆啓上仕り候」である。残念ながら動物行動の映像データベースには今のところ登録されていないが、ウェブ検索すると音声ファイルが見つかるので聞いてみて欲しい。同じホオジロのさえずりは「札幌ラーメン味噌ラーメン」とも聞こえるというのだが、人によっていろいろに聞こえるというのは面白い(でも残念ながら私にはどちらにも聞こえないのである)。

ランダムな星の並びからアンドロメダ座やカニ座といった星座を考えついた古代ギリシャ人にも尊敬の念を抱くが、鳥の鳴き声に「一筆啓上仕り候」とか「札幌ラーメン味噌ラーメン」などという言葉をあてはめる日本人も、なかなか想像力豊かではないか。

あと興味深いのは、他の言語の国では聞きなしも違うということである。例えば私たち日本人はニワトリの鳴き声を「コケコッコー」と表現するが、英語圏では cock-a-doole-do 、ドイツでは kikkireki と聞こえるという。ちなみにニュージーランドのマオリ族も「コケコッコ」と表現するんだそうな。日本人と感覚が似てるのだろうか?でもひょっとしてニワトリの鳴き方が本当に似てたりして。誰か各国のニワトリの鳴き方を録音してたりしないだろうか。

ただ「聞きなし」は鳴き声を覚えるには便利かも知れないが、実は人に伝えるにはそれほど有効だとは思えない。「一筆啓上仕り候」と鳴くのはホオジロだ、ということを図鑑などで読んで知識として知っている人が、実際のホオジロの声を聞いたときに、果たして「一筆啓上仕り候」と聞こえるだろうか。

きっとこれからの時代はマルチメディア図鑑なんてのが主流になって、文字で鳴き声を表現するのではなくて、簡単に鳴き声を再生できるようになるのではなかろうか。そして、そのような図鑑代わりに使えるぐらいのたくさんの映像がこのデータベースに登録されると嬉しいなぁ。



キジの鳴き声は何と聞こえるだろうか?:「キジの雄のディスプレイ」(データ番号: momo030519pc01b)
西 浩孝(京都大学大学院 理学研究科 動物学教室)
2005-08-26

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