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kiss me, darling

オオスズメバチ成虫の栄養交換
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「キスの時に鼻は邪魔にならないのかしら?」とはイングリッド・バーグマンのあまりにも有名なセリフだ。映画では、首をわずかにかしげる事でゲーリー・クーパーがこの問題を見事に解決しているわけだけれど、ウチの二歳児の方法はまたこれとは別である。つまり、顎を上げてクチビルをムチューッと突き出す事で、鼻を顔の最先端から後退させているという。うーむこれはまだ鼻があまり大きくなっていない幼児ならではの技なのか?と思って、私も坊を真似て窓に向かってムチューってやってみたら、ちゃんとクチビルだけがガラスについた。なんだ誰でもできるんじゃないか。だからといって、バーグマンにタコかいなされても困ってしまうが。それとも鼻の高い欧米人には無理だったりする?

ところでキスと言うと人間においては重要な愛情表現法であって、小さい子供を持つ親なら誰でも家ではチューチューマシンに化していると私は信じて疑っていないのだがどうだろう?

一方、キスをする動物では、キッシング・グラミーという熱帯魚が有名だ。でも、この魚のキスに見える行動は、実はケンカをしているのだそうだ。そういえばこの魚を取り上げていた韓国映画「シュリ」では、主人公二人の恋愛感情を二匹のキッシング・グラミーに喩えてロマンチックに表現していたわけだけれども、その実は敵対関係だったというのは、この映画を見た人には「なるほどねえ」と思ってもらえるのかもしれない。

データベースの話もしなくちゃならない。2007年4月現在で、キッシング・グラミーの映像はデータベースには収蔵されていないが、他の動物でキスをしているような映像はある。例えば「オオスズメバチ成虫の栄養交換」(データ番号: momo060110vm01b)だ。で、この話の流れと動画のタイトルからすると明々白々だけれども、ここで映し出されている口と口を合わせる行動は、私たちの知っているキスとは随分趣が違うのである。

スズメバチは、多数の働きバチが同居して、その母親であるところの女王が産む子を共同で育てる社会性昆虫なのだが、彼らの社会には一般に分業が発達していて、巣の外で餌集めに勤しむハチもいれば、中の作業に専念するハチもいる。で、こうなると餌を入手する機会のある個体から、その機会を持たない個体に餌が流れていく必要があるわけだが、そのときに使われる方法が、この動画にある(知らない人が見るとキスに思えるかもしれない)栄養交換なのだ。お腹にためた餌を吐き戻して口移しで他の個体に栄養を与えると言う。ちなみに社会性昆虫の社会は基本的には巨大な家族であって、今日の話の流れからすれば、牽強付会に、そこに愛情はあるやいなや?という話になりかねないところだけれど、そこはそれ、あまり深入りしない事にする。

どうでもいいが、キッシング・グラミーもスズメバチも顔の先端に口がついているのだから、バーグマンの心配とは無縁の存在というわけだ。それもなんだか少し味気なくて、私は人間で良かったなと思う。
中田兼介(東京経済大)
2007-04-06

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