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なきごえで識別

ミューコール、嘴つつき、給餌
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最近、我が家のチビは言葉の発達が著しい。
「明日の天気はどうかなぁ、、、」なんて独り言を言うものなら、どこで聞いていたのか「てんき!」とすぐさま真似をしたり、急いでいる人を見かけると「えっほ、えっほ」と掛け声をかけたりしている。またある朝は、隣で子供の目が覚めたことに気がついたので、寝たふりをしながらその行動を観察していると、布団の上にちょこんと座って、今まで覚えた言葉を「あ、、、あか、あお、だ、、、だいだい」などと復習している。
言葉の習得は本当に不思議だ。

1年数カ月前はただ弱々しく泣くだけだった。赤ちゃんは状況によって泣き方が違います、とは聞いていたけれど、新米の私には新生児の泣き方のその違いがサッパリわからなかった。ただ、弁解するようだが、新米の私でも自分の子の声だけは識別できる自信があった。
私はやむなく帝王切開で産んだのだけれど、手術の日までは病室で何もすることがなく、たいそう暇であった。夜は9時消灯なので、ベッドに入るものの、なかなか眠れない。廊下や部屋には夜通し、誰かの赤ちゃんの泣き声が響いている。その声を聞いていて、ふと気がついた。「赤ちゃんの泣き声って、一人一人違う!」それが面白くて聴覚を研ぎすましていると、個体識別ができるようになっていた。看護士さんの奥の部屋で赤ちゃんが泣いたら、カート式のベッドのままお母さんのいる部屋にガラガラと連れてこられるのだけど、その時に看護士さんが「○○さーん、授乳の時間でーす」と名前を呼ぶので、赤ちゃんの泣き声と名前が覚えられるというわけだ。
自分が出産を終えて3日ぐらいたった頃だったろうか、体の痛みがましになったので、夜中の泣き声クイズを再開した。そこで変な泣き声の赤ちゃんに遭遇した。フワァ、フワァ、フワァフワァフワァ、、、何か変わってる。誰の子や、、、と思っていたら、ベッドのカーテンがサッと開いた。「佐藤さーん、授乳でーす。」
この一件があってからというもの、たくさんの赤ちゃんがいても泣き声さえあれば探し出せるようになったというわけだ。退院のときも看護士さんが「えーっと、どこにいてるかな、、、」とウロウロしてるのに気がついたので「あの、今泣いてる赤ちゃんがウチの子です」というと「ほんまや!」とビックリしていた。
この時は常々自分ってペンギンみたいやなぁ、と思っていた。

鳥の親がエサ探しからコロニーに帰ってきて、たくさんの個体の中から自分のヒナをどうやって見つけるかといったら、お互いの鳴き声を手がかりにするというのはとても有名な話だ「ミューコール、嘴つつき、給餌」(データ番号: momo070411lc01b)。よくそんなことができるなぁ、と昔は感心したものだけれど、案外簡単な事なのかもしれない。

さて、ヒトの親である私。子供が言葉をしゃべり始めた今は識別ができるかというと、新生児期ほどの自信がない。同じ単語を言わせて識別、となったら特に分からなくなりそうだ。ただ、好き勝手にしゃべらせたら、言葉の種類や言いまわしの癖で自分の子だと分かりそうな気がする。いっぺん、子供がウジャウジャいるところに放り込んで実験してみようと思っている。
佐藤路子(大阪市自然史博外来研究員)
2007-06-15

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