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ちろりぃ

吻を出し入れするチロリ
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ホシムシの摂餌行動
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今年はリンネの生誕300年にあたる。ハゼの分類学者である今上天皇がリンネ協会で行なわれた記念式典に出席して講演しているが,その講演要旨が英科学誌Natureに掲載されている。講演全文もじつは宮内庁のページにあったりする。

リンネが提唱した二名法と階層構造による分類体系はよくできている。MOMOの分類群検索も,この階層構造にしたがって,界→門→綱→目→科→属→種と検索するようになっている。この検索を利用すると,それぞれの段階の分類群について何件の映像登録があるかを知ることができる。たとえば,体のつくりのもっとも基本的な構造を基準にして分類される門のレベルだと,我々ヒトのような脊索動物門の動物の映像は現在430件ほど登録されている。全登録件数は685件だから,60%以上が脊索動物の映像ということになる。もちろん全動物の60%以上が脊索動物に分類されるかと言えばそんなことはない。非脊索動物あるいは無脊椎動物のほうがはるかに多いのだが,やっぱり目につくのは脊索動物なのかしらん。まあ大きいからね。

で,いきなりだがチロリである(「吻を出し入れするチロリ」(データ番号: momo070516gc01b))。チロリなんて生き物,私は全く知らなかった。手のひらにのっている画像をみたとき,なんかミミズみたいだとおもったら,同じ環形動物門とのこと。つまり無脊椎動物だ(見ればわかるが)。毛がないからミミズ(貧毛綱)のように見えるがそれはゴカイ(多毛綱)である。ゴカイは知ってたけれどチロリは知らなかった。しかし,なんというか,わけのわからん生き物で,これがチロリだと教えられれば,そのかわいらしい名前とわけのわからん姿から,思わず「ちろりぃー」と声に出したくなるその瞬間に,映像の中でも誰かが「ちろりぃー」と呼びかけている。ああこのひともチロリみて同じこと感じたんだろうなと思って観てると,なんかにょきにょき伸びたり縮んだりする。ひょええー,と思わず声に出すのと同じタイミングで映像の中のひともうわああと叫んでいる。ヒトはああいう姿のものがああいう動きをすると,同じ反応をするのだな。けど,しゅるしゅるしゅると伸びてくると,なんか食いつかれて血を吸われそうでちょと恐い。ホシムシもそういうところがあるが,動きがゆっくりに見える分,とりあえず安心できる(「ホシムシの摂餌行動」(データ番号: momo050303ps01b))。しかし,ホシムシの映像を観ても「ほしむしぃー」とは言いたくならないのにチロリだと「ちろりぃー」と言いたくなるのは不思議だ。

チロリという名前は学名の種小名にも使われているが,もともとは吻を口からちろりとみせることに由来するらしい。んじゃがばりとみせたらガバリかと当然おもうが,それはそれとして,そういう細かいところをよく観察して名前をつけるというのは,昔のひとは偉いなあとおもう。「こないだ貝を拾いにいったら,ちろりって口から何か出す奴がいてさあ…」とかいうのを重ねていったのだろうなたぶん。

MOMOにはときどき,私が名前を全く知らなかった動物の映像が登録されている。何だこれとおもって観ると,何だこれはという動物だったりして,自然というのはわけのわからんものをつくるなあと感心する。自然というのは底知れぬものだ。

もっとも,自然の底は知れないとはいえ,自然対数の底は知られている。オイラーの貢献が大きいのだが,じつはそのオイラーも今年が生誕300年である。
森貴久(帝京科学大学)
2007-07-13

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