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動物は遊ぶか

枯葉の海で背泳ぎ
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キツネが遊ぶ
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子犬の遊び、ケンカ、「仲裁」行動
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母ヤギの背中で遊ぶ仔ヤギ
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ニホンザルの集団遊び3
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ニホンザルの馬跳び遊び
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雪の塊で遊ぶニホンザル
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イエネコの遊び
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ここで言う動物とは人以外の動物のことだが,さて,動物は遊ぶのだろうか? 

私の答えはYesであり,このデータベースの答えもYesである。その証拠に,簡単検索のキーワードに「遊び」というのがあり,これをポチッとすると,現時点で29件の映像が表示されるのである。

動物は遊ぶか,という問いにYesと答えるかNoと答えるかは,結局のところ「遊び」をどう定義するかに依っている。しかし,「遊び」は大変に定義し難い。その一つの理由は「遊び」の機能がわからないことにあるだろう。

遊び以外の行動は,その機能,つまりそれらの行動によって目指されている結果がはっきりしている。例えば,摂食行動は食物を体内に取り込むために行われ,食物が他の動物の場合はそれを捕まえるために狩猟行動が行われる。繁殖行動の目指すゴールは子供を得ることであり,闘争行動は他個体を遠ざけて何か価値あるもの(食料,なわばり,繁殖機会,順位等)を得るための行動である。行動の目指している結果が明確であれば,ある行動によって得られる結果に応じて,その行動を定義することができるだろう。

しかし「遊び」はそれが目指している結果がはっきりしない。追いかけっこをしている二頭の犬は,相手に追いついて,何をしたいのだろうか。闘争であれば,相手にはっきりとした服従姿勢をとらせることが目的だろう。しかし,「遊び」の追いかけっこはそのようには終わらない。

私達がある行動を「遊び」と見なすのは,それが上記のような機能のどれにも関係しないように見えるからである。逆説的だが,機能のはっきりしないこと,が「遊び」の判断基準になっているのであり,だから「遊び」の定義は「遊びとしか表現できない行動」ということになる。とはいえ,こんな同義反復な定義では困るので,もっと別の定義を工夫しなければいけない。

動物行動の研究者が用いている定義は,例えばこんな感じである。

次の構造的特徴を示す行動を「遊び」と定義する。1)様々な文脈の行動が混じり合って現れること,2)筋肉の運動パターンが誇張されていること,3)筋肉活動の頻度が高いこと,4)行動パターンがしばしば完了せず不完全に現れること,5)威嚇や服従の行動が現れないこと,6)楽しげであること

少し説明が必要だろう。1の,様々な文脈の行動パターンというのは,摂食行動,繁殖行動,闘争行動のような機能の明確な行動において見られる行動パターンのことである。普通は,摂食行動中に繁殖行動で見られる性行動のパターンが現れることはまずない。しかし,「遊び」には,狩猟行動の行動パターンが現れたかと思えば,闘争行動のパターンや性行動のパターンが現れるといったことがよくある。2が指摘するのは,「遊び」中の行動はしばしば大げさだということである。3は,「遊び」の中ではじっとしていることが少なくて,絶えず動いていることが多いということである。例えば,侍同士の本当の戦いは見かけ上とても静かであるかもしれないが,子供のチャンバラはもっと騒がしくがちゃがちゃしている,というような意味である。4の不完全というのは,例えば,「遊び」で咬み付きが起こった場合,それが咬み付く寸前で止められたり,逃避行動を逃げ切るまで行わず,相手が追いつくまで待っていたりするようなことを指している。

この4までは,まだなんとか客観的である。しかし,5と6になるとちょっと怪しくなってくる。5で言う威嚇や服従(降参)というのは「本気の」威嚇や服従のことである。簡単に言えば,「遊び」の行動は,例えそれが闘争行動のパターンであっても,本気で怒っているようにも,本気で怖がっているようにも見えないということである。このあたりの判断は,すでにかなり主観に頼っている。6になると,もはや開き直りである。

結局,「遊び」の判断は,それが「遊び」に見えるという観察者の主観に戻ってこざるを得ないという側面もあるのだ。

しかし,だからといって,それがまったく非客観的かというと,そうでもない。「遊び」に見えるかどうかの判断は異なる観察者でしばしば非常によく一致するのである。おそらく「遊び」と呼ばざるを得ないような,ある共通性を持つ行動カテゴリーが多くの動物に横断的に存在しているのだろう。明確に定義できないからといって,それを研究対象から外すのはかえって動物行動学の発展を阻害するだろう。私達は,とりあえずそれを「遊び」と名付け,研究をすすめていけばいいのだと思う。研究が進めば,もっと本質的な定義を手にすることもできるだろう。

さて,このデータベースに登録されている「遊び」の映像である。どうだろう,皆さんには「遊び」に見えますか?

「枯葉の海で背泳ぎ」(データ番号: momo060407pt04a)「キツネが遊ぶ」(データ番号: momo070317vv01b),「子犬の遊び、ケンカ、「仲裁」行動」(データ番号: momo041128cf01b), 「母ヤギの背中で遊ぶ仔ヤギ」(データ番号: momo031024ca01b)「ニホンザルの集団遊び3」(データ番号: momo010930mf02b)「ニホンザルの馬跳び遊び」(データ番号: momo050423mf01b)
「雪の塊で遊ぶニホンザル」(データ番号: momo050331mf01b)「イエネコの遊び」(データ番号: momo051027fs01b),他
藪田慎司(帝京科学大学アニマルサイエンス学科)
2008-01-25

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