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畑で産卵するトンボ

畑で産卵するムギワラトンボ(シオカラトンボ♀)
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チョウトンボの打水産卵
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ナツアカネの連結打空産卵
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アキアカネの産卵
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「畑で産卵するムギワラトンボ(シオカラトンボ♀)」(データ番号: momo080920un01b)という映像がつい最近登録されて、このコラムを書いている時点でトップページの一番目に表示されている。タイトルが、ちょっと引っかかる。「畑で産卵するムギワラトンボ。」トンボの幼虫はヤゴであり、ヤゴは水中で生活している。従って、言わずもがなであるが、通常トンボは水中に産卵をする。

まあ細かいことをいうと、一口に水中に産卵といってもトンボの種類によって様々である。幸い、MOMOにはトンボの産卵シーンがたくさん登録されているので、一度検索して見てみて欲しい。まず、「打水産卵」といって、飛びながら腹部の先端をで水を打つようにして卵を水中に産み落とす仲間がいる(例えば「チョウトンボの打水産卵」(データ番号: momo060809un01b))。それから、「打空産卵」といって、空中から水面に卵をばらまく種類もいる(例えば「ナツアカネの連結打空産卵」(データ番号: momo061017un01b))。あと、「植物組織内産卵 」という産卵方法を行うものもいる。学校のプールのような場所(開放水面)で産卵するのは、打水産卵あるいは打空産卵をするトンボに限られる、らしい。

閑話休題。今回登録された映像は、見ていただくと分かるが確かに「畑で」産卵している。畑に水たまりがあるわけではなく、畑に張られたビニール(いわゆる黒マルチ)に……。このことから、トンボにとって、光の反射が産卵の刺激になっているらしいことがわかる。ビニールの反射を、水面の反射と勘違いしてしまったわけだ。実は、この現象は以前登録された「アキアカネの産卵」(データ番号: momo051003un01b)に「赤トンボは、クルマのボンネットなど、キラキラ光るものを水面と勘違いして産卵することもある」と記述されていたのだが、今回こうして確かめられたわけである。

同じような例は、いろいろと知られている。例えば池に張り出した枝の上に産卵するモリアオガエルも、トンボと同様に光の反射で水面と判断しているらしく、木の下に鏡を置いてやるとそこで産卵してしまうという。そんなところで産卵したところで、孵化したオタマジャクシは鏡の上に落ちて干からびてしまう。また、卵からかえったウミガメの赤ちゃんは光に向かう習性があり、海と間違えて街灯の方へ向かってしまうという。

さて、今回の映像を見て、どう感じられただろうか。「ムシってやっぱりアホやなぁ」と思った人もいるかもしれない。あるいは、複雑に見える動物の行動が、このような単純なメカニズムによって成り立っていることに感嘆した人もいるかもしれない。私も、その一人である。しかし同時に、人間が元々自然界になかったビニールを畑に張るようになったことにより、せっかく産んだトンボの卵が干からびてしまうことに、悲しさを感じざるを得ない。
西 浩孝(豊橋市自然史博物館)
2008-09-26

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