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チンパンジーの音楽

パント・フート
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ギャロップ
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ギニア・ボッソウのチンパンジーによるナッツ割り行動
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突然飴屋さんの話である。厄除で有名な川崎大師(神奈川県川崎市)周辺には飴屋さんがたくさん軒を並べ、リズミカルに包丁の音を「トントントントントンカラトントン」とさせながら飴を切っている。残念ながら MOMO にはヒトの映像はないけれど、飴屋さんの中には web で飴切り映像を公開しているところもあるので是非ご覧になるとよい。このように昔から手作業にはリズミカルな音が付き物だった。音が出ない作業では自分で歌うこともあった。綿つみ歌とか田植え歌とかがそれである。

仕事柄、ヒトの身体運動と音の関係に興味があり、このような音の出し方が音楽の起源ではないかと密かに思っていたりする。そこで、ヒト以外の動物、特に近縁である霊長類に「運動しながらそれに合わせて声を出す」とか「リズミカルな動作で音を出す」といった現象がないかと映像を探してみた。

「パント・フート」(データ番号: momo050302pt13a)を見ると、チンパンジーが歩きながら威勢良く声を出してくれている。が、歩行動作と同期しているかというとそうでもないようで、単に歩行と発声が同時並行で行われているだけらしい。解説文によると「‥足の踏み鳴らし、地面の平手打ちや石を投げるなどの行動がいっしょに起きることがある。」とのことなので、是非足踏みや地面平手打ちと声が同期しているかどうか見てみたいものだ。

次に「ギャロップ」(データ番号: momo050113pt09a)では、チンパンジーが今度は走りながら声を出している。これはなんとなく走行動作と声とが同期しているように見えて、どことなく駕篭かきの「エッサホイサ」と言う掛け声を連想させる。興奮して声を出していると言うよりは、声を出したほうが走りやすいからではないかとも思えてくる。腕を大きく振って走っているから、当然胸腔にも腕の振りと同期した力が加わって、声と動作の同期が容易、と言うよりむしろ同期しないタイミングで声を出せと言うほうが難しいのかもしれない。この映像で特に面白いのは、走っている途中で建物の壁を「バン」と叩くところである。「ウォフウォフウォフ」という声の途切れ目にちょうど合いの手のように「バン」と音が入っている。このチンパンジーも自分の声に合いの手が欲しくて壁をぶっ叩いたのではないかとも思う。

最後に「ギニア・ボッソウのチンパンジーによるナッツ割り行動」(データ番号: momo011122pt03a)を見てみる。実は見る前にはこの映像に一番期待をしていて、石をぶつけるリズミカルな動作にあわせて声を出していないかとか、ナッツを割っていない時にも石を叩きつけて音を出していないか、などと想像していた。しかし、チンパンジー達は黙々とナッツ割り作業に従事していてほとんど声を出してはいなかった。なんとなく忘年会でカニを食べてるヒトを連想させるような無口さである。よほど集中力を必要とするのだろうか?

チンパンジーの世界には、「駕篭かき(ひとりで走ってるからむしろ飛脚か)の掛け声(合いの手入り)」はあっても「ナッツ割り歌」はないらしい。ヒトとのこの違いは何に起因するのだろうか? 言語を持つか否かが関係している、というのは大いにありそうだがそれだけでもないだろう。先に例にあげた田植え歌や綿つみ歌(両方とも集団作業の歌)をヒントにすると、他の個体とうまく協調動作ができるかどうかが鍵なのではないかと密かににらんでいる。
井上 真(MOMO 運営ボランティア)
2005-04-15

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