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巣を作らないアリジゴク

クサカゲロウの仲間の幼虫の歩行
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まずはこの映像をご覧あれ。「クサカゲロウの仲間の幼虫の歩行」(データ番号: momo081019un01b) クサカゲロウの幼虫と聞くとあまりピンとこないかもしれないが、アリジゴクの仲間といったら驚かれるだろうか。
アリジゴクはウスバカゲロウ科に属しており、クサカゲロウ科とともにアミメカゲロウ目の大部分を形成している。(ちなみにはかなさの象徴であるカゲロウ類とは目(もく)レベルで違う)

アリジゴクと言えば、サラサラの砂をすり鉢状にした巣穴でアリが落ちてくるのを待ち受ける昆虫というイメージがあるが、実はこのような巣を作る幼虫はウスバカゲロウ科の中でも少数派で、大半は巣を作らない。クサカゲロウ科の幼虫も巣を作らないと考えられていて、植物の上を徘徊してはアブラムシやハダニなどを捕食している。
たまに、木の葉の裏からテグスのような細い糸がのびていて、その先端に大きさ1,2mm程度の白い繭のような形のものがついているのを見かけることがあるが、これがクサカゲロウ類の卵である。なんでも優曇華(うどんげ:仏教で三千年に一度花が咲くと言われている想像上の植物)と呼ぶそうな。

昔、クサカゲロウ科の幼虫を自宅の庭でたまたま見つけたので、小瓶の中で飼ってみたことがある。体長2mmぐらいの個体だったが、餌として入れておいたアブラムシを食べる食べる。自分とたいして大きさの変わらないアブラムシにも果敢に噛み付いていた。正確には大顎をアブラムシの体に突き刺して、体液をチュウチュウ吸っていたので、食べるというより吸うという方がいいだろう。まるでチューペット(プラスチックのチューブに入っていて、凍らして食べる氷菓のこと)のように、みるみるアブラムシの体がしぼんでいくのが肉眼でも分かった。5分ぐらいで完全に吸い尽くしてしまうと、頭を背中側にそらして、死殻を大顎で背中へ器用に載せてしまった。歩く機能しかなさそうな脚しかないのに、どうやって体にゴミをくっつけるんだろうと疑問に思ってはいたけれど、リンボーダンスをやっている人間みたいに、頭と胸が案外柔軟に曲がるのには驚いた。
アブラムシの死殻を体につけているとニオイがカモフラージュされて、アブラムシとの共生関係にあるアリからの攻撃が抑えられそうな気がするけれど、自分の脱皮殻もくっつけていたので、本当のところはどうなんだろう。

映像の幼虫はめいいっぱいくっつけ過ぎて、本体がどんな形なのかわからないほど。白いフワフワしたのは綿状のロウ物質がついたアブラムシ類だろうか?こんな物体がちょこまか動いていたら、思わず「これ、なんだろう」とジッと見つめるかつまみ上げたい衝動にかられるけれど、それはこの昆虫にとっては本意ではないのだろうな。

当時の私は、ゴミをいっぱいくっつけてかわいいなぁ〜なんて思いながら飼っていたけれど、よく考えてみると、自分が殺した餌の死殻をおぶったまま徘徊しているなんて、なんかの映画かホラーゲームみたいだ。この大きさだからいいけれど、人間サイズだったりしたらおぞましい。
とはいえ、気がついたらくだんの幼虫は瓶の中で死んでいたので、本当に怖いのは人間の私だったりするんだろうけどね、、、

参考図書:松良俊明著「砂の魔術師アリジゴク」
佐藤路子(大阪市立自然史博物館外来研究員)
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