「ギニア・ボッソウのチンパンジーによるナッツ割り行動」(データ番号: momo011122pt03a)
「ギニア・ボッソウのチンパンジーによる葉を用いた水飲み行動」(データ番号: momo011122pt05a)
「ギニア・ボッソウのチンパンジーによる水藻すくい行動」(データ番号: momo011122pt01a)
「ギニア・ボッソウのチンパンジーによる杵つき行動」(データ番号: momo011122pt04a)
「ギニア・ボッソウのチンパンジーによるサスライアリの浸し釣り行動」(データ番号: momo011122pt02a)
これら一連の映像は、このデータベースが始まった、そのもっとも初期の頃に提供していただいた映像である。最初の段階で、このような貴重な映像を提供していただけたことは、本当にありがたかった。
研究者は彼等(チンパンジー)をしばしば「人」と呼ぶ。私は、それがなぜなのか、本当にはよくわからなかった。しかし、これらの映像を見ることで、なんとなく、その理由がわかった気がした。
「ナッツ割り行動」の映像では、オスの大人がナッツを割る。うまいもんである。彼は、しきりにカメラに眼を向ける。彼からカメラは見えているのだろうか。「何見てんだよ」という声が聞こえてきそうだ。最後のシーンは、若いメスだろう、なかなかナッツを割れない映像も面白い。割れないままナッツが転がってしまった後、少し間をおいてから取りにいくのがなんともいえない。とぼけたような表情もおかしい。私にも、彼等が確かに「人」に見える。「葉を用いた水飲み行動」では、観察している人間の女性が、歌うように記録をとっている。その歌に合わせるかのように、森の中で、別の「人」が行動している。「水藻すくい行動」では、観察者が「すごい・・」とつぶやくのが印象的だ。カメラをはさんで、2種類の「人」が出会っている。それはなにか、とても神秘的なことに思われる。
チンパンジーは、私たちを映す鏡である。彼等は、地球上で私たち人間にもっとも近い他種なのだ。しかし、おそらく幸運なことには、それは唯一の鏡ではない。ビーリヤ(ボノボ、ピグミーチンパンジーと呼ばれることもある)も同じくらい近い仲間である。ビーリヤがいてくれたおかげで、私たちは、自分たち自身を知るためのもう一つの鏡を手にしている。その鏡は、チンパンジーの鏡だけでは見えなかったところを映し出してくれる。その中には、チンパンジーの鏡には映らなかった人間の美徳と考えられるようなものもある。地球に、チンパンジーしかいなかったら、そのような面はさぞ見にくかっただろう。しかし、残念ながら、ビーリヤの映像はまだこのデータベースには無い。いつか、公開できたらと思う。ただ、その生息地である地域の政情ははなはだ不安定であり、そのことが彼等の生存をおびやかしている。心配である。
チンパンジーには、いくつかの地域集団があり、そこには文化の違いがある。上で紹介した映像には、ボッソウの文化、つまりボッソウの「人たち」しか行わない行動もおさめられている。そのことは各映像の解説を参照していただきたい。ボッソウとは別の文化を持つエチオピアのマハレの「人たち」の映像も、このデータベースにたくさん所蔵されている。こちらも、非常に貴重な映像が含まれている。それらについても、また別の機会に紹介したい。
藪田慎司(帝京科学大学アニマルサイエンス学科)
2006-02-17