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遊びと文化

葉のスプーンを使って水を飲む(沢にて)
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今回も懲りずに「遊び」である。

今年2月のコラム「2/29にコラムを担当できる幸運」で,繁宮さんが遊びと文化について触れている。彼は,偶然性を楽しむ遊びとして人間がする魚釣りをあげ,それから,チンパンジーのオオアリ釣り,ナッツ割り,水藻すくいを紹介している。そして,それらをヒトの魚釣りと類似の行動と見なしている。

とはいえ,彼は次のようにも述べる。「しかしお気づきのように、これらはいずれも『遊び』とは見なされておらず、むしろ『文化』と呼ばれている行動である」。そして1月のコラム「動物は遊ぶか」(これは私の文章だ)の定義を引きつつ,これらの行動には「食べるという目的がしっかりあるから」「遊びと呼ぶべきではないだろう」としている。

しかし,この人が本心から,これらの行動を「遊び」じゃないと思っているかというと,まったくそんなことはなくて,最後に次のように述べる。

「ただ、人間の遊びと文化についても、どちらが他方に付随するものか、あるいはどちらが他方から派生したものなのかについて論争があり、そしてカイヨワはそのような『文化が先か、遊びが先か』という論争には与せず、『どちらも対等』というような考え方をしていたらしい。人の釣りも、本来は食料を手に入れるための文化であったが、そこにはやはりギャンブル的な高揚感があったのではないだろうか。文化と遊びは不可分であったほうが面白い。」

実は,私としても,文化と遊びは不可分であるという意見に与したい。ということは,遊びを「はっきりとした(機能的)目的を持たない行動」と定義したのがうまくなかったのだ。ではどうしたらよろしいか。いきなり結論に跳ぶのだが,結局のところ「遊び」とは,遊んでいる動物の内的/心的レベルの現象として定義せざるを得ないのではなかろうか。

有り体に言えば,「楽しい」とか「やったー」とか「わお!」とか「??!」とか「△◯×?」のような,主観的で心的な経験である。そのような経験(あるいはそのように経験できる能力)こそを,遊びを定義する本質的特徴として取り上げるべきではないか。遊びと文化の連続性を視野に入れるためには,そうせざるを得ないように思われる。というのは,遊びと文化が共通しているのは,まさにそのような心的経験のレベルだと考えられるからだ。主観的に反省すれば,私達が「文化的」な活動,例えば,祭り,踊り,音楽,創作,機械操作,政治,儀式,科学などを行っている時に感じる心的経験には,遊んでいる時のそれと多くの共通点がある。

チンパンジーの「文化」行動の映像を見ながら,そんなことを考えたのだが,そのうちの一つをあげておこう。「葉のスプーンを使って水を飲む(沢にて)」(データ番号: momo060407pt01a)である。

最初は,葉を水に浸してなめているだけだが,途中で,偶然だろうか,葉の持ち方を変え,スプーンのようにして水をすくい始める。きっとそれまでよりも多くの水が口の中に入って来ただろう。それに「びっくりした」のだろうか。このチンパンジーは,それまできょろきょろしていたのに,水面をじっと見つめ始め,リズミカルに葉を口に運んでいる。何か,考えているようにも見える。その後がまた不思議である。葉を水の中に沈めてしまうのだ。そして,水の中で葉を動かしているようだ。ヒトの幼児がする行動に似ている。食事の最中にスープの中にスプーンをつっこんでがちゃがちゃ混ぜ始めたり。何を考えているのだろう。
藪田慎司(帝京科学大学アニマルサイエンス学科)
2008-06-06

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