視る・想うRSS

[データベースホーム]

周りが私にそうさせる

リーフグルーミング
↑click to play

オオアリ釣り
↑click to play

行動にはどんな意味があるのだろうか、と行動学者は考える。一方、心理学には、行動に関するアフォーダンスという言葉がある。アホーダンス、ではなくAffordance。Afford(提供する)の名詞形であり、「どのように行動すべきかという情報を、環境の側が提供している」という考え方である。つまり環境が行動を引き起こしている場合があるというのだ。

 いくつか例を示してみよう。取手のついたコップがあれば、人は普通、取手の部分を持つだろう。このような行動は、学習したわけでもないし習性とも違う。割り箸の紙袋があると、それを結んで正五角形を作り、落ち葉を拾うと、ついつい細かくちぎってしまうのは、僕だけではないはずだ。つまり、長く平べったいものは「五角形」を作ることをアフォードするし、パリパリと壊れやすいものはちぎることをアフォードする。また優れたデザインの道具は、適切な行動を起こすようにアフォードする。

 では動物にも、アフォーダンスによって引き起こされた行動があるだろうか、と思ってデータベースを探してみたが、残念、見つかりませんでした!昆虫では環境につられて行動することがあまり無いか、あるいは混乱しているのと区別が付きにくい。ではチンパンジーはどうだろうか。「リーフグルーミング」(データ番号: momo050302pt04a)では、葉っぱを「毛づくろい」するチンパンジーの様子が映っている。これは自分の皮膚をまじまじとみつめていたチンパンジーが、「葉っぱ」にまでまじまじ見ることをアフォードされてしまったのではないか、と思ってみたが、どうも口から出したシラミを葉に乗せてつぶすという行動らしい。つまり適応的な道具使用ということだろうか。また「オオアリ釣り」(データ番号: momo050302pt03a)では、枝をアリの巣に突っ込んで、アリを釣る様子が見られる。これは、穴があるとついつい棒を差し込みたくなるというアフォーダンスによって引き起こされた行動である、と考えるのは、やはり無理っぽい。

 動物の行動を映像で見られることの良さは、撮影者が意図していない行動までもが見られることであり、それは写真や文章では難しいことでもある。今後、意図せずアフォーダンスを映した映像が登録されないか、楽しみに待ちたいと思う。

 なにはともあれ、我々は時に考え無しに行動してしまうことも多いので、望ましくない行動をアフォードするものは、身の回りから無くしておくのが良いのではないだろうか。もし、うっかり望ましくない行動をアフォードされてしまったら、そのときは「これぞアホーダンス」と笑おう。僕はときどき、作業を終えたワープロファイルを閉じる時に、「保存」「キャンセル」「保存しない」のうち、なぜか「保存しない」を選んでしまうことがあり、泣く。
繁宮悠介(長崎総合科学大学)
2005-11-11

バックナンバー

2008-02-29〜2008-06-06
2008-02-22
雪の中の生き物
西 浩孝(十日町市立「森の学校」キョロロ)
2008-02-15
卵の行動学
原村隆司(京都大学大学院動物行動学研究室)
2008-02-08
動物非行動学
井上 真(MOMO 運営ボランティア)
2008-02-01
森貴久(帝京科学大学)
2008-01-25
動物は遊ぶか
藪田慎司(帝京科学大学アニマルサイエンス学科)
2008-01-18
「ありがとう」のサイン
中田兼介(東京経済大)
2008-01-11
学習指導要領改訂とMOMO
広瀬祐司(大阪府立茨木高等学校)
2008-01-04
技術革新
石田 惣(大阪市立自然史博物館)
2007-12-28
蛸を愛した人
佐藤路子(大阪市自然史博外来研究員)
2007-12-21
真似はスゴイ
繁宮悠介(長崎総合科学大学)
2007-12-14
思わず応援したくなる
西 浩孝(十日町市立「森の学校」キョロロ)
2007-12-06
ピルエットと二足歩行
藪田慎司(帝京科学大学アニマルサイエンス学科)
2007-11-30
Pirouette ピルエット
藪田慎司(帝京科学大学アニマルサイエンス学科)
2007-11-23
急がば走れ
森貴久(帝京科学大学)
2007-11-16
ナメクジの味
中田兼介(東京経済大)
2007-08-05〜2007-11-09